最近読んだ本、「芭蕉の風景 上、下」。

  • 2022年2月3日
  • 3人

小澤實、「芭蕉の風景 上」

旅する芭蕉を追いかけた本。とても良い。
紀行文を追いながら句をとりあげ、その句の意味や背景、読まれた場所が持つ
何かを追いかける。とても専門的で固いような感じにどうかなと思いつつ、
ついつい惹かれて結局全部読んでしまった。
最初は「野ざらし紀行」。
近畿、東海の旅だ。
第1章 伊賀上野から江戸へ
第2章 野ざらし紀行 取り合わせ発句の発明
蓑虫の音を聞きに来よ草の庵

蓑虫は鳴くのか? 何と!
枕草子 43 虫は、すずむし。ひぐらし。てふ。松蟲。きりぎりす。はたおり。われから。
ひをむし。蛍。
みのむし、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらんとて、
親のあやしききぬひき着せて、「いま秋風ふかむをりぞ来んとする。まてよ」といひおきて、
にげていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、
「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。
なるほど! 「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴くのか?
ええですなあ!!

星崎の闇を見よとや啼千鳥
いざさらば雪見にころぶ所迄
神垣やおもひもかけずねはんぞう 伊勢外宮
次は「笈の小文」、奈良、大阪、和歌山、兵庫など近畿中心の旅。
知ってる場所がいっぱい出て来る。
第3章 笈の小文 師と弟子 同行二人の旅路

しかも、男の恋人と二人きりのラブラブの旅だ。
そして、「更科紀行」。木曽路から姥捨の月見の話。

第4章 更科紀行 次の旅への予行演習

小澤實、「芭蕉の風景 下」

下巻はわしの大好きな「奥の細道」から始まる。
道中で詠まれた句でも採用されなかったものもある。
修正されたものもある。
句ができるのは旅から旅ののリアルタイム。
紀行文は後から、綿密なる企みの上で創られてる。
一言半句必殺の世界だ。
その後を、句をたどり、場所を辿る。
すばらしい。

第5章
石の香や夏草赤く露あつし
臭覚、視覚、触覚 殺生石 那須湯本
嶋々や千々にくだきて夏の海
松島の句はないはず。実はある。掲載されなかった
涼しさを我宿にしてねまる也
尾花沢。ゆったりと休んで座る。10泊もしたらしい。
五月雨をあつめて早し最上川
涼しから改変された?
大石田から酒田への船旅? 実際は元合海から?
文月や六日も常の夜には似ず
七夕の夜に詩歌をつくる習慣を謳う? 不快な出来事があった後らしい。
一家に遊女もねたい萩と月
実際にあったのか、なかったのか? 興味津々
塚も動け我泣声は秋の風
会わないまま死別してしまった弟子を悼む。
むざんやな甲の下のきりぎりす
金沢 実盛の兜 義朝の家臣、木曾義仲追討 白髪を染めて出陣討死
「あなむざんやな」、謡曲実盛から。
其のままよ月もたのまじ伊吹山
奥の細道未掲載、「蛤のふたみに別れ行く秋ぞ」の他のにもあった句。

第6章
こちら向け我もさびしき秋の暮れ
北村雲竹、僧、書家 自画像に賛を頼まれた時のもの。
大津絵の筆のはじめは何仏
第7章
ぴいと啼尻声かなし夜の鹿
ながくあとをひく声。死を意識したか?
床に来て鼾に入るやきりぎりす
大阪 之道 酒堂の諍い。
詩経 7月 野に在り/8月 宇(のき)に在り/9月戸に在り/10月 蟋蟀、我牀下に入る
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る

高名な俳人らしい作者の俳句も掲載されている。
わしにはようわからん。
とにかく、面白かった。
よかった。

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ありがとうございました。