最近夢中で読んだ本、横光利一、吉村昭

  • 2008年8月19日
  • 2人
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横光利一、「上海」
昭和の初め頃の上海が舞台である。
欧米や日本が進出して工業を立ち上げている中で、中国共産党が立ち上がり
排外、排日の運動が起こっている。そういう不安な世情を暮らす男達、女達。
ストライキ、暴動、酒、女、ダンスホール、ピストル・・・、退廃の中に
きらりと光る共産党の美女。
もう何十年も前の世界なのに、表通りをちょっと曲がって、路地裏に
入って行ったら、ここに登場する人達に、出会うかも知れなさそうな、
まだそんな顔も持った街のように思える部分も上海にはあるといえる。
一方では、大躍進の象徴のような都市でもあるし、
面白いけど、怪しい街でもある。

吉村昭、「わたしの普段着」
本の帯に、「これぞプリンシプルのある人生」と書かれている。
読んでみるとまさに実感だ。

この人のモノを書く姿勢は、「史実に基づいた事しか書かない」、
「史実に基づいていると信じられるものしか書かない」とある。
そして、それを貫いている。

更に、「子規を書こうと思った」、「結核と闘った闘病生活の経験で書けると思った」、
「しかし、子規の凄まじい病気との闘いの日々を知ると、書くことが不遜だと思った」
とある。
こういう人生。本当にプリンシプルがある。
このエッセイから人柄が伝わってくる。
いいものを読んだ爽快感がある。

hon080819

毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。