九度山暮らしのある日、ある日、突然、ガン患者になってしまった話−40、映画「ロングディズジャーニー」に行った。

映画「ロングディズジャーニー」に行った。

コロナパニックがどんどん大きくなってきてる。えらいこっちゃ。これも少し前の話ではあるけど
事態がきついほうに展開し始めたころだ。
怖い。一度癌になったからと言ってほかの病気に罹らんようになったわけではない。
しかし、こんな状況やったらどこへも行かれへん。けど映画くらいは行きたいではないか、それに
ちょうど行きたい映画が来ている。「ロングディズジャーニー〜この夜の涯てへ〜」というやつだ。
さすがのわしもマスクを着けていく。マスクが効くかどうかは疑問はあるんやけど
つけてない爺さんはバイキン扱いされるかもしれん。劇場まではわりとひっそり、
劇場フロアに到着したらえらい混雑してる。
皆さん、例のやつは気にならへんのやろか、マスクしてる人は多いけど、マスクしてたら
ええというもんでもないで。映画館は換気をちゃんとやってるから比較的安全やと
いう噂もないではないけど、こんだけ人が多かったら直接とうやつもあるやんか。
映画自体は何の問題もなく時間通りに始まった。
後ろの方で咳が聞こえるだけでビクッとなってしまうのはわしが繊細な心を持っている証拠だ。
さて、いきなり舞台は中国の貴州省、凱里に飛ぶ。
ルオは久しぶりに故郷凱里に帰ってきた。
父は死んだ。母は男と逃げた。
想い出になるものは何もない? 一枚の写真と緑色の本?
幼なじみの’白猫’を罠にかけて殺したのは?
写真の女は? ワン・チーウェン?
女優じゃないか?
写真に残った電話番号は?
水がポタポタとおちる朽ちかけた部屋の中、古ぼけた掛け時計の中にあるもの。
暗くて古ぼけたトンネルの中。男と女。
時間と空間がくるくると変化する。脈絡があるような無いような。
男がタバコを吸いながらボソボソと喋る。女はタバコを吸いながら黙っている。
めくるめく映像美。夢か現か、現か夢か。まやかしの世界にぐんぐん惹きつけられる。

さすが聊斎志異の国。
パンフレット冒頭のチェン・カイコーの賛辞の中にも「李商隠」の詩の世界のようなとあった。
過去と現在、現実の虚構が何の説明もなく、渾然とそこにある。それが李商隠の世界らしい。
言葉の裏に隠された膨大な知識と暗喩。
こういうのが教養としてすらっと出るのが中国の奥深いところやね。
わしが知ってるのは、「楽遊原」くらい。
晩(くれ)に向(なんな)んとして意(こころ)敵わず
車を駆りて古原に登る
夕陽(せきよう) 無限に好し
只だ是れ 黄昏に近し
これを機会に読み直してみた。
確かに、難解ではあるけど奥深い不可思議さがあるみたいだ。もっと読み返してみよう。
こつこつと階段を登る。石段と足元だけが延々と映る。
そして少数民族の村の中にある幻影。
とても素晴らしい。
3Dで見られなかったのは残念だ。

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ありがとうございました。