毎週火曜は最近夢中で読んだ本、中島敦、ポール・セロー

  • 2009年10月6日
  • 2人
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中島敦、「李陵」
 いか程の厚さもない文庫本で、しかも短編集。あっという間に読了かと思っていたら、
 手痛く圧倒されてしまった。
 ここに描かれた男たちの独立不羈、不撓不屈の生き様がまざまざと立ち上がってくる。
 難解な漢語の羅列、しかし良く考えてみると、この場面を明確に表すにはこの言葉しか
 ないと分かってくる。
 力とリズム、透明感。こういうものが不足なく緩みなく打ち込まれている。
 読み終えた時の疲労感が心地よい。
 そういう本だ。
 山月記
  世に容れられない才をもてあまし、狂ったあげく畜生に落ちてしまった男。
  それでも猶、人の心を持っていたいのか。
 名人伝
  究極の名人とは何なのか、己が名人であることすら忘れる程の境地なのだ。
  見えざる弓で見えざる矢を打つと、獲物が落ちる。
  その先は。
 弟子
  孔子と子路。
  異端の弟子の痛快な生き様。孔子という男いったい何者だったのだろう。
 李陵
  将軍李陵が敵に捕らえられた。
  節を曲げて屈するのか。
  派遣した武帝は怒って、一族を惨殺してしまう。かばった司馬遷(史記の作者)は
  宮刑に処せられてしまった。
  有名な話だ。

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ポール・セロー、「ワールズ・エンド(世界の果て)」
 旅行記の名人、ポール・セローの連作短編集だ。
 舞台は世界のどこか。しかし旅の話ではない。
 異郷にいて、安住や安らぎのない暮らし。心はどこに?
 満たされない、癒されない男と女。
 「暗闇の中で目覚めた・・・音がする・・・泥棒ではない
    ・・・女が出て行く音だ・・・」
 「去るのは実に簡単な事だった・・・・今では俺もそのやり方がわかった・・・
  ・・・音もなく歩き去り・・・・そのままずっと歩きつづければいいのだ・・・」
 「やっと女とおさらばできた。・・・・そして旅に出る・・・行きずりのドライブイン
  ・・・「俺と逃げよう」・・・女は来るか?・・・来た・・・
  その結果は?・・・」
 いろいろと考えさせられる。

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毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。