京都、法然寺

紅葉未だ来の頃、法然寺に行った。
行きたくていったわけでもないし、前から知っていたわけでもなくて、
「行くよ」といわれて連れていかれたらそこが法然寺だったというわけだ。
水墨画の先生の知り合いが個展をしているという事で顔をだそうという話だった。
「哲学の道だよ」
「そこを右にまがって、次を左にまがって」
わからんまま、細い道を車を運転して、着いた。
はずかしながら京都にこういう寺があるとは知らなかった。
知らない事は数々あるがこれもその一つだ。中国人の老師の方がよく知っている。
山門に着いた。「葷辛酒肉、山門に入るを許さず」とある。
匂いの強い野菜、辛いもの酒、肉はあかんということだ。
簡単に言えば、「酒とあてはあきまへんで」ということ。禅寺ではないと思うが
戒律が厳しいのだろう。熊谷次郎直実が法然の許しを得て建てたとある。
またまた登場人物が、先だって読んだ「道元禅師」などと同時代の人達だ。
それにしても、この参道と山門の感じがなかなか味がある。
山門は緑の草にびっしりとおおわれていて古びて枯れた味わいというよりは、
生き生きと生命力に満ちている。
枯れた中からたちあがってくる生命というのが新鮮だ。
門を入れば左右に沙山がある。
びしっと表面を長方形でまっ平らに整えて箒の刷毛目で画を描いている。
意味はよくわからないが、本堂に入って行く緊張感を一気に整えているかのようだ。
ここから奥を見とおす景色も風情がある。
質素で簡潔な寺であった。

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