フェデリーコ・マリア・サルデッリ、「失われた手稿譜 ヴィヴァルディをめぐる物語」
これは素晴らしい。とても面白い。まるで見てきたような。と思ったら、著者は本格的な
ヴィヴァルディ研究者で、綿密に調べ上げた事実の上に立ってノンフィクション的な
小説世界を作り上げている。まるで推理小説を読むような疾走感、ワクワク、ドキドキ、
ハラハラな展開に惹きつけられる。
高名な作曲家にして演奏家でもあるアントニオ・ヴィヴァルディ司祭は、借金に追われ
ヴェネツィアから逃げるようにして去った旅先で失意のうちにこの世を去った。
残された妹たちマルガリータ&ザネッタ・ヴィヴァルディ、弟のフランチェスコには
借金だけが残る。そして取り立て人たちがヴィヴァルディの家にやってくる。
どうしよう。何もかも持っていかれる。理髪師、書籍商である弟はある作戦を思いつく。
第1章 ヴェネツィア 1740年
弟が兄の手稿譜を持ち出す
第2章 ダ・パッサーノ城 1922年
ドラッツオ侯爵の遺産 教会へ がっかり
第3章 ヴェネツィア 1741年
債権者が探すが見当たらない
第4章 ボルゴ・サン・マルティーノ 1926年
修道院を礼拝堂新たに
屋根裏部屋の木箱
第5章 ヴェネツィア 1741年
弟が兄の手稿をソランツォ元元老院議員に売る
第6章 トリノ 1926年
修道院 鑑定を依頼
第7章 ヴェネツィア 1776年
デュ・ティロ侯爵 イエズス会士を追い出す。
カノニチ司祭→ヴェネツィアへ 財産は保全
ついでにソランツォ家の手稿本を買い叩く
第8章 トリノ 1926年
ロベルト・フォア氏の息子マウロ
トリノ国立図書館長
手稿本の鑑定を依頼され差し押さえて入手を図る。
資金は フォア氏から
偶数巻がない
第9章 ヴェネツィア 1780年
ドラッツオ神聖ローマ帝国大使 カノニチ司祭から手稿本を買う
第10章 トリノ 1927年
ドラッツオ侯爵家から手稿本を買う
もう一人の寄付者
第11章ジェノバ 1893年
ドラッツオ侯爵家の遺産が2つに分割
第12章 6つのエピローグ1937年
ファシスト 黒シャツ隊 ユダヤ人狩り
アメリカ人 演奏 解釈
手稿譜であることにどんな意味があるのか? どれほどの価値があるのか?
一旦消えたに見えた手稿譜が辿る数奇な運命。
果たして無事に後世に残されたのか?
音楽とはあんまり縁がないわしでも、次がどうなるかどんどん先を読みたくなる
とても良く出来てる。とても面白い。
イアン・マキューアン、「憂鬱な10か月」
これはすごい、シニカルでクレバー、ありえない世界でもある。
胎児が主人公になり得るなんてどういう発想で考えたんやろ?
さすがイアン・マキューアンの世界。とても面白い。
トゥルーディは妊娠している。旦那はジョン・ケアンクロスという詩人だ。
幸福な結婚生活と思いきや、旦那の弟クロードと不倫している。
旦那は家を出ていった。
トゥルーディのいる家にクロードが入り浸ってる。
そしてあろうことか二人で旦那の殺人計画を練っているのだ。
この家を乗っ取るつもりだ。
ボクはその胎児だ。動くことはできないし、話すこともできない。しかし、
外界の話し声や物音を聞くことはできるし、感じることもできる。
いろんな事を考えることもできる。
誰もがボクの存在を気にしていない。というか、話し声が聞こえたり、何かを
したり、しなかったり、そんなことを感じとれるとはまさか思っていない。
ましてやモノを考えてるなんて。
しかしだからと言って何かができるわけではない。
しかし、この殺人計画はボクにも大いに影響がある。生まれたあとのボクの立場は
どうなるのだ?
計画は周到に立てられていく。果たして知られずに毒を飲ませる事ができるのか?
計画は完璧だ。果たして自殺と思い込ませることができるのか?
しかし、実行するのは怖い。
ある日、突然事態は展開する。旦那のジョンに恋人がいたのか?
ジョンは2人に自分の家から出ていくように要求。
もうやるしかない。
果たしてうまくいくのか?
ボクはどうなる?
とても面白い。
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