カズオ・イシグロ、「夜想曲集」
カズオ・イシグロは大好きな作家の一人だ。
とても頭脳的で企みが一杯で、シュールで難解だ。
そして生き様や愛や苦悩の表現が実に素敵だ。
この本はこの人の初めての短編集だろうか?
「音楽と夕暮れをめぐる5つの短編集」とある。
ベネチア、サンマルコ広場、ロンドン、イギリスの田舎、ロス
風景が実に美しい。そして壊れかけた男と女。取り返そうとする愛。
この話にはポップスが、この話にはサラ・ボーンの歌声が、
あのチェリストの若者はどうなってしまったろう。
読み終えたらすぐにレコードプレーヤーに向かった。
「パリの四月」を聞こう。
壇一雄、「漂蕩の自由」
この人は、放蕩というか放浪の天才だ。
こんな風にどんな街にでもふらりと行けて、何も先を決めずに
行動できたらどんなにいいか。
ヨーロッパはおろか、解放前の中国でも平気だ。
言葉もなんのその。
幾つになっても子供のような純粋な好奇心を失わない。
どんな場所でも、そこにいる人達と仲良くなれる。
食べ物が好き、人間が好き。生きる天才だ。
でも、きっと本当は書かれてないことの方が何倍も面白いんだろうと思う。
だから、「まあ、これくらいにしといてやろう」と余裕で書けるんだろう。
うらやましい人生だ。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。