九度山暮らしのある日、滋賀、守山の佐川美術館へ「田中一村」展を見に行った。

田中一村展を見に行って大感動した話をしたい。
特に其の時に強く思ったこと。
会場を回っていると作品展示のそばに解説がある。そのなかにこんな記事があった。
日展や院展、その他公募展に応募して落選になった話だ。
これ程の絵を描く人が何で落選するのか?
信じられへん。
時々取りざたされるように、選者のあいだで自分たちの流派を優先してるんとちゃう
やろか? よほどの事がなければ露骨にこういう事はやりにくいはず。
それより、選者の資質の問題ではなかろうか? その道で世間の評価を受けて選者に
なるくらいの人であれば段々と気持ちが保守的になっていくんとちゃうやろか?
自分のあるいは自分たちの美意識ではまかないきれないものを受け入れる柔軟さが
なくなって行くんとちゃうやろか? そういう気持ちが自ずとちょっと違う範疇に
あるものを受け入れられなくて低い評価を下しているんとちゃうやろか?
よそ者は受け入れられない、受け入れなれにくいって話をあまりにも聞くではないか。
うちは公正にやってるって誰しも言うけど、それは方法論の話であって己の許容範囲が
狭くなってることに気が付かないんではなかろうか?
そやから、本当は選ぶ側にも資質を問われてるんやと言うことを認識してもらいたい
ものなのだ。
わしがいきり立ってもなんもならへんけど、こんな人が落選してきたという記述をみて
そう思った。
昨今スポーツの世界で話題になってるパワハラも似たようなもんかもしれん。
一世を風靡したヒーロー、ヒロインがその世界のオーソリティになったとき、己の
創った道の呪縛から逃れられへんのやろなあ。
わしが公募展にだしてもいつまでもうだつが上がらんのもそのせいかなんて、自分に
なぞらえてみたりするけど、わしの場合は又別の話。
「お前は下手やからや。それだけのことやんか」と絵の神様に言われそう。

では、本題に戻る。
FBで知り合いの方が、滋賀県守山市の佐川美術館で「田中一村」展をやってるって
アップしてはった。中村一村と言えばわしは絵の現物はみたことがないけど、以前、
知人から教えられて調べてみたら、水墨画家、日本画家でありながら、最後は奄美大島に移住して、
アンリ・ルソーみたいなとても印象的な作品を描いてられたというくらいの知識くらい
であった。とても興味がある。
それで絵の仲間を誘って行くことにしたけど、なんせ暑い日が続くんで気持ちが先延ばし
してるうちに会期が終わりそうになったんでちゃんと決めて其の日を迎えた。調べてみたら
アクセスが結構難しい。琵琶湖の東側にあるのに、JR東海道線の守山駅からバスで行くより、
JR湖西線の堅田駅からバスで行ったほうが近そうだ。しかし、いろいろ考えると堅田駅
周辺には何もなさそうやし、折角いったら帰りにスケッチでも行けたらええなあって
思うとJR東海道線側の方がええかもしれんと、あんまり行き帰りの利便性を深く考えずに
守山駅集合にしてしまった。渋滞もあってバスは遠い。

着いてみればえらい人だ。こんなに人気とは知らなんだ。1000円払って中に入る。

中も大混雑。こういう時は順番に並んで進んでいくととても時間がかかる。列を外れて
後ろを通って先に行く。結構すいたとこはあるんでそこでゆっくり見る。そのうち、
並んでた場所も空いてくるんで又戻る。行ったり来たりを厭わんかったら十分ゆっくり
見ることができる。これが最近身につけた新しい見学技だ。それでも空きが出えへん
くらいの人混みやったら諦めて人垣の後ろから眺めるしかない。
で、感じの絵はどうなんやと言うと。
「素晴らしい」、「大感動」としか言いようがない。
まさかこんなんやとは思てなかった。特に南画調の作品に心惹かれる。ものすごい確かな
技量だ。揺るぎないとはこのことだ。水墨画の基本がすべて十全に備わってるよう。
こんな人がいてたなんて驚きだ。
八大山人風がある。呉昌碩風がある。与謝蕪村風もあるし、富岡鉄斎風もある。
古今のいろんな名人の名品の画風に興味を持ってはるし、技を習ってる。
中国の文人の気分も大事にしてはる。蘇東坡の漁樵閑話、屈原の哀しみ、林和靖の孤独。
富岡鉄斎が私の絵を見る時は画賛もかならず見て欲しいと言ったようにこの一村の画賛も
すばらしい。

 

なんども行きつ戻りつする。
この世界から現実に戻るのはもったいない。
当然のことながら本を買って帰る。
しかも解説を全部よんでしまった。めったにないことだ。

帰ろうとして驚いた。帰りのバスは極端に少ない。
どうもJR堅田駅経由の方が琵琶湖を渡るとは言え距離的に近いらしい。美術館からの
シャトルバスも出てる。(こんな時だけか?)それにしても長蛇の列だ。
わしらは腹が減りすぎてる。やむなく、タクシーで乗り付けた人の帰り車を狙って
タクシーで堅田へ戻る。
このあとどっかへ行こうなんていささか冗談になってきた。

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ありがとうございました。