九度山暮らしのある日、今年も「樗(おうち)の木」に花が咲いた。

今年も「樗(おうち)の木」に花が咲いた。去年も同じ頃この話をしたと思う。
去年は5月の終わり頃やったんで桜の開花と同じで今年は何でも咲くのが早いようだ。

花は見たとおりとても儚く繊細な紫の小さな花だ。仄かな香りも奥ゆかしい。

看板には栴檀の仲間であるが、「栴檀は双葉より芳し」の栴檀はこの木ではなくて、
実際は白檀の事だそうだ。なんかややこしい。
そして、南方熊楠がこよなく生涯かけて愛した花であると書いてある。
熊楠は故郷和歌山が生んだ天才学者であるけど奇人、変人ということでも名が高い。
こないだドラマになった岡潔とエエ勝負なんかもしれん。
一つの道を脇目も振らず突き進むとそうなってしまうんかもしれん。
時間に構わない、服装に構わない、食いもんに構わない。
こんな暮らしの綺談、枚挙に暇がない。
生涯役職につかない、無冠無位の人だった。
それでも生物学、菌類の世界では誰知らぬ人とていない著名な研究者で、論文も
沢山出している。
すごい人だ。
万里の道をいったかどうかわからんけど紀州の野山をかけめぐってたらしいし、
萬巻の書を読んでその知識は驚異的なものだったという。
この人の書の知識は読むだけやなくて書き写すの熊楠の流儀らしい。読むだけやなくて
書いてこそ頭に残るという。確かにそうなんやけど、わかるけど凡人にはできへんのや。
すごい人だ。
そして、ある時、昭和天皇から御進講の依頼があったのだそうだ。それも東京に行く
のではなくてわざわざ天皇が紀州までお召艦でこられるのだそうだ。
さすがにフロックコートを着て行ったらしいけど、標本はキャラメルの箱に入れていった
らしい。それが一番ええって信じてはったんやろけど、周りはびっくりしたやろね。
すごい人だ。
そういうすごい人なんやと思い起こしながら見てみる。

あえかな薄紫がとても美しい。

遠くに高野山が見えてる。

今日も観光客が一杯来てはる。ここを通って慈尊院まで行ったり、更に高野山まで
町石道をたどって登る人たちも多い。
けど、ここに足を止める人は殆どいてへん。
知らんのか? 知らしめてないんか? 知っても興味ないんか?
寂しい限りだ。

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ありがとうございました。