最近読んだ本、「蜜蜂と遠雷」、「おらおらでひとりいぐも」。

  • 2018年6月1日
  • 2人

恩田陸、「蜜蜂と遠雷」
すばらしい。本としてどうかとか、筋の運びがどうとか登場人物がどうとか色々
あるかどうかわからんけど、音楽を文章で表現するというこの一点をとってみても
なんと素晴らしい文章の力なんやろかと感心してしまう。
まるで目の前に舞台とグランドピアノと演奏家が登場して、どんな作曲家の曲を
どんな風に解釈してどんな風に演奏しているのか。それが観客にどんな風に聞こえてる
のか、そんなことが目で見て、耳で聞いて、演奏家の息遣い、客のどよめきまで
現実の事のように立ち上がってくるかのようではないか。
それが、次々に現れる演奏者がそれぞれにもっている物語と共に、個性豊かな音楽と
して紙面から溢れ出してくるかのようだ。
芳ヶ江国際ピアノコンクールが開催される。日本だけでなく国際的に認められた
権威あるコンクールだ。ここで優勝するということは音楽家としての将来が約束
されるということでもあるらしい。
そしてそういうコンクールの審査員に選ばれたからには誰をどう評価するかという
ことに審査員としての力量が問われるということになる。うかつな評価はできない
のだ。
そして、そういうところに無くなった名演奏家から一通のメッセージが届く。
「皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする。文字通り、彼は「ギフト」である
恐らくは、天から我々への。だが勘違いしてはいけない。
試されているのは彼ではなく、私であり、審査員の皆さんなのだ。」
カザマ・ジンとは何者か? どんな演奏をするのか?
若くして天才演奏家、これからどれほどのすごい人に? と誰からも思われていた
栄伝亜夜は突然、檜舞台から姿を消してしまった。いったい何があったのか?
そして彼女は見事復帰できるのか?
マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは?
ジェニファ・チャンは?
高島明石は?
天才、鬼才、秀才たちの演奏が次々と立ち上がる。
さて結果はどうなるのか?

若竹千佐子、「おらおらでひとりいぐも」
これはすごい。独特の世界観で独特の世界を作り上げているような。いつのまにか
東北弁の魔力にとらわれてしまってることに気がつく。とても面白い。
日高桃子さんはもう老齢だ。夫に先立たれ、子どもたちは愛想をつかしたのかどうか
あまり寄り付かない。
一人暮らしは気ままで平穏なようだ。
紅旗征戎は我が事にあらず、自分だけの世界でのんびりやって行けば良い。
はたしてそうだろうか。
ときどきネズミが顔を出す。なんか言うてるようだ。
時々絨毛突起がさわぎだす。
時々夫周造が話しかけて来る気がする。
時々いろんな人が話しかけてくる気がする。桃子さんはいちいち相手する。
議論することもある。
狂気なのか? 妄想なのか? 唯の老いなのか?
不思議な世界に行きている。
24歳の秋、追われるように東京に出た。住むとこもない帰るとこもない。
必死で住み込みの仕事を探した。そして周造と出会う。
好きな男の理想の嫁になれるよう努力したつもりだった。
そして、今。
とても気になる世界を見せてくれている。じっくり心にしみてくるようだ。

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ありがとうございました。