トーマス・リュダール、「楽園の世捨て人」
珍しく爺さんがカッコよく活躍するサスペンスだ。ストーリーに関係なく頑張れよって
言いたくなる。
舞台はスペインの楽園観光地カナリア諸島だ。そこでもう世を捨てたかのような
爺さんが固定客だけが相手のピアノの調律とタクシーの運転手をやっている。
ある日、海辺に乗り捨てられた車の中で生後間もない赤子の死体が発見された。
金に困った売春婦あるいはそれ紛いの女が始末に困って置き去りにしたんやろと言う
ことで警察も世間もそれど終わりにしようとしてる。
しかし、何かおかしい。どうも納得できん。エアハートが動き出す。あちこち嗅ぎ回ってると
色んな事実が浮かび上がって来る。これは事件に違いない。
そんなある日、突然、事件が。
親友ラウールの彼女が瀕死の重傷に。親友はどこに消えた? ベアトリスをどうする?
事件を掘り起こすうちになぜか大きな暗闇に触れたのかもしれない。
つぎつぎと危ない事件が身に迫る。
とても異色な感覚のサスペンスで爺さんの活躍がカッコいい。
爺さん、婆さんの濡れ場まである。
とても楽しい。
藤原新也、「大鮃」
大分前に、この作家の「インド放浪」と「西藏放浪」とを読んだことがある。
とても面白い本だった。よくある紀行文やバックパッカー見聞録みたいなのとは
全然違うのだ。たまたま異郷のどこかにいて、あるいは彷徨いついて、何かを
見つめている。そした何か心象風景のようなものを切り取れるそんな瞬間が訪れる
のをじっと待ってる。わしにはそんな感じがした。本には沢山の印象的な写真が
載ってたんで、もしかしたらこの人は写真家かもしれんと思ったらやっぱりそうやった。
それで、書店でこの本を見た時、あああの人は小説も書いてるんかと思い、どんなん
やろと興味を抱いて図書館で予約した。
ある日、太古はスコットランドに旅にでる。父の故郷オークニーを見て見たかった、
というよりは何かに導かれて来てしまったかのようなのだ。
来てはみたもののそこは荒れ海と風が吹きすさぶ荒地の海岸だ。ただ一つとも
言えるホテルに泊まっても行くところもないかもしれない。ホテルで読んでもらった
ガイド兼ドライバーは何十年も乗り続けた彼の風貌とおりの車とともにやってくる。
この海辺の村の彼が考える見所をあちこちと案内してくれる。
そして実はこの男、凄まじい人生を背負ってきたのだ。案内のみちすがら徐々に
それがわかってくる。
見所って、決して観光名所ではない。この荒海と烈風吹きすさぶバイキングの時代
からの漁師の村の原風景を見せてくれてるかのようだ。それはもしかしたら、父と
若者をつなぐDNAを揺さぶるかもしれない。
それは一体何なのか?
若者は何に出会うのか?
幻の大鮃とは?
出て来る男たちは老いてもとてもカッコいい。
じわっと感動できる物語だ。
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ありがとうございました。