阿刀田高、「街のアラベスク」
普通の街のごく普通の街角、そこにあるごく普通の暮らしを描いているようで
実は何かスイッチが入って、ありそうであらざる妖しい世界に入って行く。
・・・桐の木って良い部分は琴なんかに使われて、お金持ちのお嬢さんの
もちものになったりするけれど、悪い部分は下駄になってずっと人の足に
敷かれている。・・・時には、そういう桐の下駄が魔性を持つことがあるそうだ。
そんな時その魔性の下駄をはいていた人は、・・・・どうなる?
・・・気になる女の子の真っ白な首筋にぽつんと小さなほくろが・・
「ほくろって吸ったら小さくなるんだよ」・・気を引くために?
「吸ってよ」・・・「えっ?」・・
ある日、封筒がとどく、開いたら、何も入って無い。
くちなしの花の香りだけが・・・
貴方の右手の二本の指は・・・何を覚えてる?
・・・・
・・・・
妖しい世界。
ダイ、シージエ、「月が昇らなかった夜に」
「小さな中国のお針子」という本を書いた人の小説だ。
中国、清朝最後の皇帝、溥儀が日本軍の飛行機で満州に運ばれる時に、
わざとか誤ってか、ある貴重な書を落とした。
それを拾った人が・・・
誰も読めない文字を記した謎の奇書を巡って、中国から、フランスから
仏典の始まる国から、
想念の中を巡り巡る奇妙は話だ。
こういう象徴的な話を書く人は中国人作家では珍しいと思う。
毎週火曜は、最近夢中で読んだ本の話です。