三浦しをん、「舟を編む」
本を作る、特に辞書を編纂するという現場を舞台にした小説は初めてでそのこと
自体がとても新鮮だった。
ちゃらい系の軽い青春群像小説みたいなんとちゃうやろかと読み始めは危惧しながらだった。
確かにそういう傾向はありつつも読みながらぐんぐん惹きつけられるところもある
面白い本であったと思う。
玄武書房という出版社の編集部で「大渡海」という国語辞書を編纂すると言う仕事を
もう何年も続けている編集者にもまだ先が見えない。そんな中で編集者にもとうとう
定年退職が迫ってきた。この先どうなる? 誰か引き継いでくれるんやろか?
そんなところへ営業部から馬締という青年が転属してきた。
役立たずを押し付けられたのか?
辞書はどうなる?
編集者や松本先生の心配を他所にこの青年は実に適任だったということが段々
わかってくる。桁違いの変わり者、真面目人間、こだわりマン、特に言葉に
対するこだわりがすごい。これは役に立つ。編纂作業は一気に捗るのか?
それでもいろんな障害が発生する。紆余曲折がある。どうなることやら?
時たま、○○なる項目を辞書を引いてたり、ネットで調べたりしてるときに具体的な
説明なしに□□の項目を見ろと書いてあって、なんやこれはと思いつつ□□を
見ると○○を見ろと書いてあったりして、えらいムカつくことがあるけど、
辞書作りってそんな風にならんように願いたいといつも思う。
とても軽いけど、分かりやすい、楽しめる本だった。
蓮實重彦、「伯爵夫人」
なんじゃこれはってすぐに思ってしまう。えらい驚きに満ちた本だ。
元、東大総長が書いた本ということで、それなりに格調高いんかと思いきや、
そういう部分もないではないけど、なんと、いきなり濃厚なエロチック世界へ。
そして昭和ロマンのデカダン的な世界かと思いきや、もちろんそうでもあるんやけど
、戦場と軍人と貴族と政治家たちを巻き込んだ支離滅裂のグロテスクな世界へ、
○○タマつぶしの荒技を秘技とする伯爵夫人とは一体なにものか?
東大進学を前にした二郎が巡り合ったのは怪しげな貴婦人?
二郎が女を誘惑したのか? 女が二郎を手玉にとっているのか?
とりまく女たちも手練の技を隠さない。
空想から妄想の中へ、過去から現在へ、出たり入ったり、めくるめく想念の流れ。
わしのようなクソ真面目な人間にはとてもついていけない。
あっちかと思えばこっち、そっちかと思えば意外な事実が。
映画で出てきたようなシーンや主人公みたいな人たち、小説に出てきたような
キャラクター、そういうのがこれでもかと駆け巡る。
「ばふりばふり」、「ぷへー」
いやはや、場面、場面に引きずり回されてやっとついていけるかという、荒唐無稽、
気宇壮大、なんやらようわからんエログロ小説? 官能小説? 格調高い小説?
企みがいっぱいのようである。
まあ、一度読んでみて下さい。
表紙もええではないですか。
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ありがとうございました。