梶山季之、朝鮮小説集「李朝残影」
副題に朝鮮小説集とある。梶山季之がこんな本を書いてるとは知らんかった。
エロチックな大衆小説系の作家やって勝手に思ってたんで図書館で表紙を見て
びっくりしたまま借りて帰った。
朝鮮半島が日本の植民地だった時代の物語だ。占領下の日本人の暮らし、半島の
人の暮らし、お互いの関わり合いが生き生きと描かれている。
族譜:日本の占領政策の一環として創氏改名を迫った時があった。あらゆる人に
日本姓への改名を強制したのだ。しかし、何世代にも渡って族譜という一族の系譜
を守り続けてきた人にはそれは簡単には受け入れられない。民族の誇りがあるし
先祖に対する申し訳なさもある。占領政府はありとあらゆる手段でこれを揺さぶる。
娘の結婚相手も、娘も・・、本人もとうとう最後は自殺に追い込まれる。
李朝残影:男はある妓生 に心を奪われた。彼女は宮廷に伝わる高雅な舞をおどる
舞い姫なのだ。決して体は売らない。男は画家だ。その舞姿を絵にしようと彼女の
いる料亭に通う。しかし、彼女には日本人に対する深い心の闇が。
絵はできたのか? 彼女にも悲劇の影が・・
李朝の陶磁器をめぐる話も面白かった。
岩間俊卓、「深圳の夜」
深圳は昔、現役時代に仕事で良く行った。広州空港から新幹線で約1時間、香港
からもKCRという電車で約1時間、とても便利なところだ。しかし、経済特区
という特別な土地柄だけに中国全土から出稼ぎの人たちが集まって来ていて、
けっこう緊迫感のある空気も漂っていたような気がする。
パスポートを盗られた、デジカメを盗まれた、スーツケースを置き引きされた、等々、
危ない話は沢山聞いた。職業乞食の話も聞いたし、偽物デパートも大盛況だった。
そういうところで出張者や駐在員が飲み行く、或いはカラオケに行く、そういう
楽しみの場も沢山あって、そんなところに居てはる女性との悲喜交々、挙句の果ての
修羅場騒ぎ、いろんな話も通りすがりに聞くことができた。
そんなところで、ある男が、工場進出の責任者になるかたわらで、ねんごろに
なったお姐さんのおねだりでカラオケ店を出す顛末をつづったのがこの物語だ。
小説としてどうこうより、この世界、ただただ懐かしい。
さて、カラオケ店は成功するのだろうか?
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ありがとうございました。