最近読んだ本、「肖像彫刻家」、「春にして君を離れ」。

  • 2019年10月10日
  • 2人

篠田節子、「肖像彫刻家」。

高山正道はしがない彫刻家だ。親の反対を押し切って、家庭崩壊までしたイタリアへ
修行に行ったのに、そして、マリオ・ブッチ師の正統派ローマン彫刻を学んで帰って
来たのに、日本では客がつかない。
八ヶ岳近くの田舎に引き込んで、周りの人の人情にすがって食いつないでいる始末だ。
なんとかせんとあかん。
営業に乗り出す。
第1話 レオニダスとニケ
世話になった人の息子のイタリアンレストラン、持ち込みの彫像を。
渾身のレオニダスとニケ、その成れの果ては?
第2話 雪姫坐像
ついに注文がきた。しかし怪しい。見たこともない雪姫を作れという。
秘仏だと言う本物は?
第3話 高砂
見かねた姉の依頼で父と母の像。
像同士が喧嘩を始めた?
第4話 雪姫立像
またもや雪姫。馬刺しのお供え、ご利益と祟り
第5話 最高峰
本格的な依頼が。知の最高峰の後藤田宗一郎の像を作れと言う。
さて、親族の波乱とは。
第6話 アスリート
忘れられない恋人姿を再現してほしいという。
しかし、信じられない事実が。
第7話 寿老
亡妻の像を作った男。何の罪滅ぼしか?
タイで浮気したら、えらいことに?
まるで命が宿るかのような彫像に、本当に命がやどったら?
そんなことってありえる?
とても面白い。

アガサ・クリスティー、「春にして君を離れ」。

あのアガサ・クリスティーに全く聞いたこともないような作品があったなんて、
図書館で見つけて早速借りて読み始めた。
いつもの懐かしいスタイルの軽快でスマートな謎解きが展開されると思いきや
えらい違う。こんな作品も書くんかいなととても驚いた。
とても切なくて、哀しい。とても厳しくて辛辣。恐ろしい。
ジョーン・スカダモアはバグダッドからの帰り道だ。
娘のバーバラが体調を崩したということで急遽イギリスから世話をしに飛んでいった。
なんとか事態を収めて、イギリスに帰る途上なのだ。列車のイラク側の最終点まで
着いたらそこから自動車で砂漠を越えてテル・アブ・ハミドまで行く。
長く退屈な旅だ。
列車の駅で偶然にも女学校時代の友人ブランチ・ハガードに出会った。いやなやつだ。
しかし、その車は大雨のおかげでえらい遅れてしまった。イスタンブールまでの
列車はもう出てしまった。
心配いらん。明日又来るよ。ちょっとの辛抱。
しかし、大雨の影響で列車も不通になってしまったようだ。いつくるかわからない。
何もすることがない毎日が始まる。
何かを考えるしかない。散歩しても時間が経たない。読書しても時間が経たない。
何かを考えるしかない。
弁護士の夫、ロドニーの事。かれは本当に弁護士になりたかったのか?
長男トニーの事。長女エイヴラルの事。次女バーバラの事。
いろんな事があって順調で幸せだったはず。
しかし、あの時のあの一言、あの時のあの振る舞い。
もういちど考えてみよう。気づいてない事があったのでは?
いやいやそうではない。
もっと考えてみよう。
マーナ・ランドルフの事?
レスリー・シャーストンの事? 非業な死をとげた彼女はロドニーと?
あの時のあの言葉は何を意味する?
もっと考えてみよう。
だんだんと思念が固まってきた。知りたくない何かが見えてきたのか?
ジョーンは果たして帰れるのか?
愛する夫ロドニーは?

汝がとこしえの夏はうつろわず

君はひとりぼっちだこれからもどうかそれに気づかないように。

とても面白い。
一気に読んでしまった。異色中の異色ミステリー?

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ありがとうございました。