最近読んだ本、「ヌメロゼロ」、「7つの会議」

  • 2017年2月5日
  • 7人
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ウンベルト・エーコ、「ヌメロゼロ」
ウンベルト・エーコの新作は大体チェックして読む様にしてるんやけど
昨年亡くなられたんでもうあんまり新作が出えへんやろというのが残念だ。
この人の本はどれも面白い。面白いけど難解でもある。
「薔薇の名前」、「バウドリーノ」、「プラハの墓地」、どれもヨーロッパ
中世が舞台で、その豊富な知識に裏打ちされた壮大なドラマになっている。
どれにも入念な仕掛けや裏技が仕込まれているようで、わしのようなぼんくら
人間には読んでるだけでは十分、成る程そうかと思えるほどついては行かれ
へんけどそれでもたっぷり楽しめる。どんな解説にも知の巨人という言葉が
でてくるけど、そういうすごい人なのだ。
で、この本は今までとはちょっとだけ様子が違ってる。
情報と情報操作のテクニックの話だ。
ある新聞を新規創刊するためにといろんなスペシャリストらしき人たちが集め
られた。「握りつぶされた真実を告白すること」が目的だと言う。
そして、そのパイロット版のための編集会議が開かれる。
なんとそれはどのようにして記事をでっちあげれば、どのような事件が起きた
事になるのか、あるいはなかった事になるのか、様々な情報操作のテクニックが
論じられ評価される会議であった。なんと恐ろしい。
一体何が目的なのか? それが何を生み出すのか?
そしてある日、その中の1人が恐ろしいことを言い出した。彼の調査によれば
ムッソリーニの死に方に問題があるのではないかという。死ぬところを誰も見て
いない。死体はバラバラになっているから誰も確認できていないという。
もしかしたら死んでいなかったのでは?
ではどこに?
克明な調査記録が明らかにされていく。
そして、それを暴いた男に危険が迫る。
そして、シメイと恋人マイアにも。
一体真実はどうなのか?
とても面白い。

hon170205-1

池井戸潤、「7つの会議」
この人の企業モノは、面白いけど、ええモンと悪モンがはっきりわかれすぎて
話が急に嘘くさくなったりするんで好きになれへん部分も多いんやけど、やっぱり
ついつい読んでしまってええモンの応援をしてしまうんは、元出来損ないサラリーマン
の性なんかもしれんなあと思う。
この本は、そういうええモン、悪モン対決色が少し少なくて、その分余計に楽しめる
ような気がしながら読むことができた、
ある巨大企業の子会社の営業部の話から始まる。
坂戸はエリート課長、誰もができないコスト削減を容易にこなして、次々と目標
を達成する。出世コースの最前衛だ。
しかし、不思議な事がおこる。この男を万年平社員がパワハラ委員会に訴えたのだ。
そして、そのあと実に不思議な人事が行われる。
何か裏がありそうだ。
一方、あるネジ会社がつぶれかけている。発注元の無理な要求を呑まなかったんで
注文がなくなったのだ。もうだめだ。しかし、その時突然元の発注が復活する事に
なった。
なぜだ?
何か裏がありそうだ。
この会社を巡っていろんな事が起こり始めた。どこかで歯車が狂い始めているのか?
いったん綻びた縫い目は元に戻せないのか?
隠そうとすればするほど泥沼にはまっていくのではないのか?
組織の中にいたらいろんなややこしそうなヤバそうな話を聞く機会も多い。
驚きあきれるようなこともないではない。
お客様のクレーム担当の人、営業担当の人、品質担当の人、設計開発担当の人、
製造担当の人、購買、経理、いろんなところでいろんなリスクがある。
欲もあれば誘惑もある。
しかし、ほとんどの人が落とし穴にはまらず、こんな本に載る様なことにはならずに
乗り切ってはる。
とはいえ事実は小説より奇なりということもよくある話だ。
現役の人たちは気をつけましょう。

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ありがとうございました。