藤原新也、「印度放浪」
普通の文庫本の3、4冊分くらいもある分厚い本だ。勿論その文中身が多い。
普通の旅行記とは全く違う。
印度では、未だにガンジスの辺で死した人が焼かれ、河に流される。
あるいは鳥葬もある。
日々の暮らしに生き死にが関わるのはどこでもあたりまえの話だが、
印度には、それぞれがむき出しの生々しさを見せながらの混沌の風景がある。
一旦、その混沌に捉われてしまうと容易には抜け出しがたい魔力と魅力があるようだ。
印度のすぐ北にあるチベットの地が、人をひたすら天空に導く地だとすれば、
印度は、人をひたすら土に、河に導く地なのだろう。
それで、この本は、どこに行って何をしたとか、どこにに何があるとか、
どこで誰と会って何をしたとかそういう物語ではなくて、
例えばこういう空気の中に写真機を据えて、ひたすらおのれの死生感の
ようなものに触れるものを撮り続ける事で、実はその中にいる自分が
その中から語り続けていたいものを吐き出しているかのようだ。
多分、読んだだけでは何も分からない。
行って見なくては何も分からない。行っても分からないかも知れない。
のだろう。
毎週月曜は、最近夢中で読んだ本の話です。