亀山郁夫、「新カラマーゾフの兄弟」
いつかやるんとちゃうやろかと思ってたらとうとうやったか。この作家の「カラマーゾフの兄弟」
の翻訳はとても面白かった。重厚な古典文学というよりは波乱万丈のミステリー
を読んでるみたいだった。しかもその時に、この話にはきっと続きがあるはずや
と言うような後書きがあって、「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」と
言う本もその後でてきた。これもとても面白かった。このひといつかは続編を
小説として書いてしまうんとちゃうやろかと思ってそのままになってたら、先日
書店の店頭でこの本を見つけた。何と続編も含めたカラマーゾフの兄弟の完全版
を自己の小説として書き上げたみたい。なるほどそうなるんやろなあと俄然興味
が湧いて、図書館の待ち行列に登録した。なかなか順番が来ない。既に人気高し
なのだ。
分厚い本が上下で2冊。読み応えがある。
黒木ミツル、イサム、リョウの3兄弟がカラマーゾフの兄弟だ。
父親は黒木兵午。
話は黒木家の物語として、そこにkの手記が絡まりつつ展開していく。
突然というか当然と言うか、黒木兵午が死んだ。死んだのか殺されたのか?
それぞれが疑心暗疑に。誰かが殺したのか? 何故? それとも誰かが殺らせた?
使嗾殺人という一つの考えが浮かぶ?
リョウはフクロウの知恵という新興宗教と深い関わりがある。
リョウは何を求めているのか?
宗教は、神は人を救えるのか?
新たに天日天人教なるものが現れた。リョウはこちらに靡くのか?
この本を読んで、昔読んだ、高橋和巳の「邪宗門」を思い出した。この本をさっさと
読み終えて、「邪宗門」を読み直した。
素晴らしい。全然色褪せてない。ぐんぐん惹きつけられる。無明の悲しみ、無間地獄
を背負って生きる切なさ。
宗教は何のためにある? この世に救いはあるのか?
時にはあまりの切なさに涙が止まらない。一気に読んでしまった。
新カラマーゾフに戻る。
「邪宗門」と比べるのは気の毒かもしれん。
たしかに面白い。カラマーゾフをベースにしながら独自の小説としてとても良く
できてると思う。しかし、こんなふうにあえて明らかに元本と同じような流れ
で同じようなテーマに挑むのはわしとしてはすごく違和感がある。
いっそ一旦クリアして全く別の小説として創り上げた方がもっと魅力的なものが
できたんではなかったやろかと思う。
ドストエフスキーに似せたらドストエフスキーの凄さを超えられへんと思う。
とても面白いのにちょっと残念だ。
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ありがとうございました。