「偽りの楽園 上、下」、トム・ロブ・スミス
ダニエルはロンドンに住んでいるが、両親とは中々音信ができていない。それ
と言うのも、うだつのあがらない日々のあげく同棲を始めたからだ。しかも、
相手は男で、相手の家に転がり込んでいる。その事実を中々言い出せなくて時
間ばかりが過ぎて行ったのだ。両親は僅かの財産を処分して、スウェーデンに
移住し、念願の田舎暮らしを始めている。何時か会いに行かないといけない。
そんなある日、突然父親から電話がかかってきた。
「母親がそちらに向かった」という。
えらいこっちゃ。
そして事態は難しい事になりつつある。父親が言うには母親は精神に異常を来
しているらしい。状況が飲み込めず戸惑ってる間に、母親から連絡が入る。
「夫から逃げてロンドンまでやってきた」と言う。いきなりダニエルの家に現
れて、切羽詰まった状況を説明し始めた。夫とその仲間が母を追い詰めて精神
病院に閉じ込めたと言う。やっとの思いで逃げ出した母を彼らが必至で追って
いるのだと言う。父親が言ってることは全部でたらめで、夫とその仲間にはと
んでもない陰謀があるのだと言うのだ。
その陰謀とは何か?
追われる母は隠された事実を次々に説明する。
スウェーデンの静かな森と農村の暮らしに一体何が起こっていたのか?
幼児虐待か?
小児誘拐か?
そんなところにも閉鎖的なムラ社会があるのか?
そこの有力者達は何を企んでいるのか?
しかし、母の話が本当なのか? 父の話が本当なのか?
事態は切羽詰まっているようなのだ。
ダニエルはどうする。
スウェーデンに乗り込んで真相を探るしかないのか?
異色のミステリーだ。
とても面白い。
「スーツケースの半分は」 近藤史恵
スーツケースに荷物を詰め始めた時から、旅の愉しみが始まるようだ。
必要なモノを入れながら、スケジュールをシミュレーションしていく。これが
要るか要らないか、雨が降ったらどうしよう。寒いやろか、暑いやろか、気に
し出したらいくらでも膨れあがるけど、入れ物には限りがあるし、体力にも限
りがある。できるだけぎりぎりを狙いたい。折角持って行っても使わずに帰っ
くるもんがあると寂しい。それと乗り継ぎや地上移動があるときの事も考えん
とあかん。大形スーツケースはバスに載せられへん場合もある。時間の余裕が
少ない時は荷物の数が少ない方がいい。
あちらに移動するときはどうなる、こちらに移動するときはどうやろ?
いろいろ考えながらパッキングを仕上げて行くと、不安が半分、期待が半分の
いつもの旅に出る気分が出来上がってくる。
この本では、幸運のスーツケースが登場する。一つのスーツケースが売られた
り借りられたり譲られたりしながら持ち主を渡っていって、その時々の持ち主
が幸運をゲットできたと思うスイッチの役割をしていくようだ。
勿論誰のスーツケースにもそんな仕掛けは密かに仕込まれているのだ。
ある日、気がつかない間にその仕掛けにスイッチが入っていて、あなたに幸運
をもたらすのだ。
期待しながら旅を続けよう。
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