甘耀明、「神秘列車」
とうとうこの日が来た。ある日、少年はあの列車に乗る決心をした。
お爺ちゃんから何時も聞かされていた。あの神秘列車だ。まず深夜にこの村を
出る列車に乗ら無いといけない。切符を買って席につく。
列車は走り出した。
あたりを見回すと不思議なお客が多いようだ。もしかしたら、この人たちも神
秘列車に乗ろうしてるんではないやろか?
車掌さんは、どこで乗れるか知らないという。そんな列車は知らないという。
そんのものは無いよって言う人もいる。
ずっと後ろの車両に、神秘列車を知ってる学生がいた。神秘列車について熱く
語ってくれる。しかし、実際に乗ったことは無いようなのだ。一体どうすれば
あの列車に乗れるのだろう。きっと方法はあるはずだ。列車はある山の中の霧
深い駅に停まった。
ここで待ってたらきっとその列車がやって来るはずだ。
やっぱりきた。この列車は本当にあの神秘列車なのか?
闇の中に村が見える。お爺ちゃんが軍から逃げて隠れ住んだ
村なのか。お母さんが子供を連れてどうしても列車に乗らないと
いけないのは何故なのか。
時間の闇を切り裂いて列車が走る。
時空を巡る列車の旅。
ファンタすチックでシュールな物語。
けど、台湾日本の統治が終わったあとやってきた時代の悲しい物語でもある。
短編集はこんなタイトル。
神秘列車
伯公、妾を娶る
葬儀でのお話
素麺婆ちゃんの映画館
微笑む牛
洗面器の素麺を盛る
鹿を殺す
台湾の田舎、少数民族の暮らしと大陸からの文化とごっちゃまぜになった世界。
めっちゃおもしろい。
池波正太郎、「散歩の時、何か食べたくなって」
食いもんの話を読むのはいつも楽しい。
開高健の本を読んでたら、ベトナムに行って、絶対おんなじもん食わんとあかん
わって思うし、沢木耕太郎の本を読んでたら、インドやタイやベトナムやアジア
の裏街をさまよってあんなもん食えたらええなあって思うし、吉田健一は・・
丸谷才一は・・、檀一雄は・・、山口瞳は・・、なんて老人ボケが始まってるわ
しでもいろんな人が思い浮かぶ。
しかし、やっと同じ店を探し当てても実は文章の素晴らしさに惑わされてただけ
で、あれこんなはずではなかったけどと思うときもある。
時と共に嗜好も変わるし味も変わる。作り人も変わっていく。
それでも食いもんの本を読むのはやめられへん。やっぱり文の力だ。
同じ本を何度読んだ事か。
さて、この本、ずいぶん昔書かれた本だ。
しかし、つい最近書かれたかのような新鮮な臨場感を感じるものもある。
ああ、こんな時代もあったなあって思うものもある。
それでやっぱりできるなら同じモノを食って見たいと思う。
やっぱり文の力はすばらしい。
出て来る店は今も残ってる店もあれば、もう無くなった店もある。残っていても
えらい値段が高いだけの店になってしまってるとこもある。
時代が変わっていくのはしょうがない。
本を読んで楽しもう。
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ありがとうございました。