映画、「倫敦から来た男」

この映画を見てからもかなり時間がたってしまった。
それよりずっと前に映画館で、この映画のポスターを見て面白そうだなと思った。
しかも、原作はジョルジュ・シムノンだ。メグレ警視シリーズだけでなくて、確か
「仕立屋の恋」という映画の原作もジョルジュ・シムノンの原作だったような記憶がちらっとあって、
ああいう作品も書く人の本なら「先に原作を読んどこう」という気になった。
なかなか面白かった。
シュールで不条理の世界のようであった。
フランスの田舎の港町。対岸にイギリスがある。毎日イギリスから船がつく。
何もない無味乾燥の日々。船の出入りの為に桟橋を開け閉めする男がいる。
ある日のこと、船が到着した。あやしい男がいる。税関に見つからないよう鞄を陸になげた。
やがて、受け取った男と投げた男が合流した。諍いが始まる。1人が海に落とされた。鞄も落ちた。
そこから事件が始まる。見ていた男が鞄を海から拾い上げると大金が入っている。
何もない街で何かが動き始めた。
被害者は見つからない。犯人も見つからない。
この金はどうなる。
イギリスから刑事がくる。事件の関係者もくる。フランス語と英語、微妙に通じない。
・・・・
こういう作品をどんな映画にするのだろう。
非常に興味があった。
霧の中にたたずむひっそりとした薄暗い港町。
シュールな感じがしてきた。
セリフは殆どない。
事実だけが淡々と写されて行く。
事件に巻き込まれたおとこがずるずると時間を引きずって行く。
・・・・
たいていの場合、原作を読んだあとはつまらない映画と感じるものだが、これは違っていた。
感覚的なものが非常によく表現されていると思った。

昔、この港町の対岸になるのかどうかわからないが、イギリスの田舎の港町に行った事がある。
引退した老人ばかりのひっそりとした港町。
なんとなくこんな感じであったかもしれない。
パブでビターなビールを1パイント飲みながらシュールな感覚に浸ってみたい。

eiga100527

毎週木曜は映画、音楽、書画に関する話です。