新潟、塩沢の酒、鶴齢

かなり長く日本酒を飲んでいなかった。
新潟の酒が1本だけ残っている。名前を見ると、「鶴齢」とある。ちょっと感じの良いラベルだ。
酒はいつも常温で飲む。味はどうだ。
「うまい」
久しぶりに美味しい日本酒を飲んだ気がする。
甘口すぎないし、辛口に思わせるために無理をしているところもない。
自然な味わいがいい。あとくちもいい。えぐみが残らない。
それでいて淡白ではない。しっかりと酒の味がある。
こういうきちんとした酒にはなかなか巡り会えないのだ。
青木酒造創業1717年とある。
鈴木牧之「北越雪譜」の地で生まれた酒だ。
この本の書きだしはこんなだという。
「われの住む魚沼郡は日本第一に雪の深く降るなり・・・」
美味しい酒ができそうな感じだ。
ついついいくらでも飲んでしまいそうだ。
大分酔っ払ってきた。ご機嫌だ。

では、この酒に陸遊の売花翁の詩をささげよう。

君見ずや 会稽城南の売花の翁
花を以って糧と為すこと 蜜蜂の如し
朝に一株の紫を売り
暮に一枝の紅を売る
屋は破れて 青天を見
盎中 米 常に空し
花を売りて銭を得れば 酒家に送り
酒を取り 尽くる時 還た花を売る
春春 花の開くこと 豈に極まり有らんや
日日 我の酔うこと 終に涯無し
亦た知らず 天子の殿前 白麻を宣するを
亦た知らず 相公の門前 堤沙を築くを
客来たりて与に語るも 答うる能わず
但だ見る 酔髪 面を覆いて垂るること髿髿(ササ)たるを
岩波文庫、「陸遊詩選」一海知義編より
 
紫の花を売っては酒に換え、紅の花を売っては酒に換える。
春の花に終わりがないように、私の酔いもきりがない。
いいですなあ。飲んだくれ人生は。

sake100528

毎週金曜は酒や茶に関する話です。