ジョン・ル・カレ、「繊細な真実」
この人のサスペンスは大好きだ。ちょっと普通のサスペンスものとは違う味が
ある。いつも新しい視点の新しいシチュエーションと血湧き肉躍るアクション
もあるし、話の展開も早くてリズムに乗りやすい。しかしそれだけではなくて、
人の暮らしもそこに描かれているようなのだ。ユーモアがあって、どこか哀し
い。絶望にうちひしがれても、ぶれなくて挫けない。勇気と元気を貰えそうだ。
キットはごく普通のさえない外務省の職員だ。
ある日何故か、特殊部隊やCIAを巻き込んだ、対テロリスト捕獲作戦のビッ
グプロジェクトに参加させられた。
何かおかしい?
その作戦は何故か当然の事のように挫折して、何故か無かったことにされてし
まったようだ。
何かおかしい?
そして、また平凡な暮らしに戻ったキットは何故かサーの位をもらい、引退す
る。そして典型的な田舎の引退暮らしを始めようとしていた。
何かおかしい。
そんな所に過去の亡霊が現れた。
一緒のプロジェクトにいたジェブだ。
あの作戦には隠された疑惑があると言う。関係のない母親と赤ん坊が巻き添え
で殺されたという。その真実を明かさないと生きて行けないという。
権力に対する空しい戦いが始まった。
ジェブはどうなる? その出来事は本当だったのか?
本当に権力に一泡吹かせることができるのか?
実に面白い。
山田太一、「月日の残像」
高名な脚本家のエッセイだ。自分の歩んできた人生を淡々と綴っている。
戦中戦後の混乱期の父との暮らし、母の死、貧困の中での兄たちの哀しい死。
松竹撮影所での助監督見習いの時代。
木下恵介との出会い。
ドラマの成功。
来し方のゆらめきが、ゆっくりと静かに立ち上がってくるようだ。
心にしみるようなエッセイだ。
と思おうとしたんやけど、何故か素直に感動できなかった。
何故かはようわからん。
けど家族に対する視線がちょっと気になる。
わしの文章を読み取る力の拙さと、心が歳と共にいぢけてしまっていることで、
素直な心に共鳴できなくなってしまってるんやと思う。
素直な皆さんをきっと感動されることと思います。
ご一読を。
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ありがとうございました。