レイチェル・ジョイス、「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」
最初は、何の本やろ? わけ分からんなあ?って読み始めたけど、途中から
ぐんぐん惹き付けられて、最後まで一気に読んでしまった。
こんなんあり得へんわって言う状況設定やけど、もしかしたら有りかもしれ
んなってって思い始めた。
ハロルド・フライは妻のモーリーンと暮らすごく普通の初老の男だ。しかし、
妻とは必ずしもうまくいっているわけではなさそうだ。
それは息子のデイヴィッドが関係しいそうだが、はっきりとは分からない。
ある日、彼の元に一通の手紙が届く。
驚くべき内容だ。
昔、同僚だったクウィーニー・ヘネシーという女性からで、直る見込みのない
癌にかかって遠くの街の施設に居るという内容だ。
彼は返事を書いた。色々考えたが結局は平凡な内容だ。それを出しにに近所の
ポストに向かう。いろいろな考えが一気に彼を襲う。どうしていいか分からない。
なかなか投函できない。途中でガソリンスタンドに寄って店員と話をする。
話しているうちに突然思う。
会いに行こう。
会って、一言お礼を言おう。
果たして、彼とクウィーニーの間には何があったのか。
歩き始めたのはサウス・デヴォンというイギリスの最南端の方にある街だ。
目的地はベリック・アポン・ツイードと言う最北端の方にある街。
1000kmを越える度だ。
かれは、普通の服と、普通のすニーカー。
そんなんで果たして行き着けるのか。何が彼をそういう行動に駆り立てるか。
最初はホテルで泊まりながら、途中から、野宿しながら、
自然の中で歩きながら、その意味を考える。
果たして、ハロルド・フライは歩き通せるのか?
クウィーニー・ヘネシーは生きて待ってるのか?
モーリーンとの夫婦関係はどうなる? デイヴィッドに何があった。
とてもスリリングでスピーディで手に汗握る面白い本だった。
吉村昭、「冬の鷹」
長崎遊学で医学書「ターヘル・アナトミア」を入手した前野良沢は、なんとか
それを翻訳したいと願う。しかし、彼の語学力ではとても刃が立たない。その
頃、杉田玄白も同じ本を持っている事を知る。そして、ある日、腑分けがある
んでそれを見て、「ターヘル・アナトミア」に書かれてる内容の真偽を確かめ
ようと誘われる。そして、その結果、その正確さに愕然とする。
彼らは力を合わせて「ターヘル・アナトミア」の翻訳を成し遂げようと誓う。
しかし、その道はあまりにも険しいものだった。
言葉を知るものもない。辞書もない。
しかし、彼らは一語ずつ、あらゆる方法を使って理解することを積み重ねる事
によって、何と翻訳を成し遂げてしまったのだ。
しかし、彼らの人生は大きく違って行く。
栄光の光の中に出て行く者、
学究の暗闇の中にのめり込んで行く者。
あの翻訳の意味は彼らのとって何だったのか?
前野良沢の生き様を通して、この時代が立ち上がってくる。
読み応えのある本だった。
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ありがとうございました。