最近読んだ本、「未明の闘争」、「敦煌の風鐸」

  • 2014年4月9日
  • 2人
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保坂和志、「未明の闘争」
こういう出だしから始まる。
「ずいぶん鮮明だった夢でも九年も経つと細部の不確かさが現実と変わらなく
なるのを避けられない。明治通りを雑司ヶ谷の方から北へ池袋に向かって歩い
ていると、西武百貨店の手前にある「ビックリガードの五叉路」と呼ばれてい
るところで、私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。・・・」
物語は淡々と始まり、淡々と流れて行く。
ある時は死んだ篠島と一緒に何かしてたり、ある時は、昔の友人達とわいわい
やっている。ある時は隣に住む主婦とふいに押しかけて来た友達と朝までぐだ
ぐだとお喋りしている。
いろんな話が関係ないようで、関係あるようで絡み合ってるようで、平行線の
ようで何故始まったのか、どうなるのか、いつおわるのか定かではないようで
ある。こういう話の紡ぎ方って何故か面白い。
ドラマチックでないのにどこかで引き込まれてしまっている。
プルーストの失われた時を求めてを読んだ時の事を思い出した。
「・・・眠っている人間は、時間の糸を、歳月や万象の秩序を、おのがまわり
に輪のように巻きつけているものだ。目をさますと、本能的に、そうしたもの
をまさぐって、そこから自分の占めている地点と、目が覚めるまでに流れ去っ
た時間とを、瞬時に読み取るのだが・・・」
***マルセル・プルースト「失われた時を求めてⅠ」新潮社より。
こんな風に意識の流れが延々と・・・。
不思議やけど面白い本を読んだ。

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常書鴻、「敦煌の風鐸」
大分前に中国甘粛省にある敦煌に行ったことがある。中国では比較的、小ぶり
の街だ。でも人口はかなりある。その街はちょっと郊外にでると全くの砂漠の
中だ。その中に巨大な岩窟遺跡がある。
莫高窟だ。500を越える岩窟の中に夥しい仏教画が描かれている。すばらし
い遺産だ。
作者は中国清国滅亡の少し後に、元々洋画家を目指した人だった。パリに行っ
て洋画を学ぶうちに、敦煌遺跡の芸術に触れて感動する。
中国に戻ってから、荒れ果てた敦煌遺跡の復興と保存の為に立ち上がって奮闘
する物語だ。中国国内は国民党から共産党に移り行く途上の頃だ。こういう文
化的な活動を理解してもらうのは難しい。金もない人員もない悲惨な状況下で
苦難を乗り越えてここまでやった人がいたというのは全く知らなかっ
改めて敬意を表したい。
それにしても、哀しい時代を乗り越えて昔は仲良くやってたんやけどねえ。

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