酒井充子、「台湾人生」
この本、丁度読む本が切れた頃に図書館で何か次に読むええ本ないかいなと物
色してたときにひょいと見つけた本だ。すぐではないけど、もうしばらくした
ら台湾に行く予定もあるんで、何か印象に残る話はないかなと思って借りた次
第だ。
読み始めて驚いた。すごいやないか。
これはどうやらドキュメンタリー映画になった話なのだ。しかも評判を呼んだ
映画らしい。
物語は九份と言うところから始まる。「千と千尋の神隠し」のモデルになった
建物があると言うことで今では観光客で溢れているところだ。作者がここに来
て、帰るためにバス停でバスを待っていたら、老人に日本語で話しかけられた。
興味深い話になりそうな予感がしたが、バスが来てしまったのでやむなく帰っ
てしまった。それが心残りで再度その人を探しに来たが、分からない、どうも
亡くなってしまったらしい。その時聞けなかった話はもう聞くことはできない。
そうして、その心残りを抱いたまま、他の多くの日本語を話す台湾の人から複
雑な日本への思いを聞いてまわることが始まった。この本はその物語の記録な
のだ。
今まで漠然とした知識で台湾の事を考えていたが、戦中戦後の動乱と混乱の厳
しく哀しい日々を生き抜いた人たちの生の言葉で日本や台湾や中国に対する想
いをこうして読んでいるともっともっと深く考えないといけない事が多いなと
思った。
台湾を旅していても、変な圧力感を感じた事は全くない。
人に優しい国なのだ。
われわれもそうありたいものだ。
ドストエフスキー、「地下室の記録」、翻訳、亀山郁夫
青臭い青年の独白の書と言うような感じで物語が始まる。
よくありがちな、自尊心は人一倍高い癖に、孤立したがり、わざと己を貶める
ような言動に走る。その癖それで軽く扱われたり軽蔑されたりすると、その不
当さを思って気も狂わんばかりになる。
そんな話が延々と続いているかと思ったら、その微に入り、細に至る話の流れ
がだんだんと物語としての面白さを帯びてくる。
青年は娼婦なんかと軽蔑している。そんな軽蔑すべき女に哀れみをかけ、もし
かしたら救いの言葉をかけることができるかもしれない自分の事がなかなかえ
えもんやと思っている。しかしその女から一たび哀れみの目で見られてしまっ
たら・・・。
ほんの小さな出来事を書き綴っているようで、話はどんどんドラマチックに展
開していく。次はどうなんのやとついつい一生懸命読んでしまう。
さすが巨匠の文学なのだ。
亀山郁夫の翻訳がすごいからこうなるんやろか。
一気に読んでしまった。
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ありがとうございました。