アラヴィンド アディガ、「グローバリズム出づる処の殺人者より」
ひとりの起業家が、書を民主主義が没する処の天子温家宝に致す。
「拝啓中国首相殿、あなたに真の起業家精神を教えましょう。
主人を殺して成功した、このわたしの物語を」
こういう出だしで始まる本だ。実にユニークで面白い。
前に読んだ、ジョン・アーヴィングの「サーカスの息子」もインドを舞台にした実に
面白い小説だったが、こちらも異色でかつ面白い。
「グローバル・・・」という題はいかにもあざとくわざとらしいが、原題は
「WhiteTiger」とあり、こちらの方がいい。
カーストの制度にしばられてどうにも抜けだしようのないインドの貧しさ。
そこであえぎあえぎしながらも何とか運転手の口をつかみ、少しずつ這い上がろう
とする。そしてチャンスが・・・・・。
インドだけかどうかしらないけれど、人を雇う時、同郷の人を雇うのだそうだ。
「その一族を知っている。何か悪い事をすれば、父母兄弟、家族一族が担保になって
しまうから、それができない」という仕組みだそうだ。
仕事でインドに行った時の話だ。
車を手配してもらっていた。仕事が終わって、建物の玄関に出てくると、どこでも
運転手を呼び出す係りの人がいて、マイクで呼んでくれる。
暫くすると、その車が来るのだ。例のアンバサダー、白い車だ。
呼ばれるまでじっと待っている運転手の側のことがよく分かる本だ。
石川淳、「天門」
不思議な本だ。ストーリーは唯の恋愛モノとしか思えない。
しかし、何と重厚な文章だろう。なんと骨太な文章だろう。
リズムがあってぐんぐん惹きつけられる。
古文調だが飽きさせない。
すばらしい文造りの技だ。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。