今年初めての文楽だ。新春公演は行けなかったのでこの日が来るのが楽しみで
あった。今回も1部、2部であるが、前回見た仮名手本忠臣蔵とは違って通し狂
言ではない。まあそうであっても両方見たいし、1日で一気に見るのはちとしん
どい。それで又2つに分けて見ることにしよう。と言うことでまずは2部から。
特に理由はなくて2部の方が先にええ席があっただけのことだ。
それで今回は事情があってチケットが安く手に入ることになったので折角やか
ら1番前の列で見ることにした。前は一番後ろで全体感がよくわかってよかった
んやけど今回は趣向を変えて人形の表情や細かい動きを感じてみたいと思った。
幕が開いた。
曽根崎新地、遊女の小春には惚れ合った男がいる。
紙屋治兵衛という男だ。しかし男には愛する妻も大事な二人の子どももいるの
だといういきなり難儀な話。
老舗の紙問屋の主ではあるが、遊女に入れあげてもう金が尽きた。
そんなおりから小春に横恋慕した江戸屋太兵衛が先に身請けしてしまおうとす
る。あせる2人はもう心中するしかない。
治兵衛の兄はええかげんに眼を覚ませと治兵衛に迫る。
当たり前の話だ。
治兵衛の妻のおさんは愛する夫を死なせないでと小春にすがる。
悲しい話だ。
それでも優柔不断な治兵衛は何も解決できない。
ずるずると心中しかない道へと転げていく。
あいかわらず人形浄瑠璃の主人公の男はだめ人間だ。
あの頃の男ってそんなやつ多かったんかもしれん。
それに比べて女はえらい。
恋の道をまっしぐらだ。
さてそれでやっぱり一番前は一度は座る価値があった。
人形が目つきを変える表情を変える一々が目の当たりにできるではないか。
手足を動かし体を動かすしぐさのなかに、おどろきやためらいや艶めかしさが
次々に現れる。人形遣いの太夫たちは表情も変えずに手にしてるその人形たち
はまるで生きているかのように躍動しているのだ。
どの国をさがしてもこれほど洗練された人形劇はないやろと思う。
日本の誇り、上方文化の誇りではないか。
某市長さんにつぶされないよう、席を埋めないといけない。
あのドナルド・キーンさんさえ某市長さんにメッセージを送ってくれたと言う
ではないか。
文楽がんばれ。
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ありがとうございました。