さて次は祥瑞寺へ向かう。さっきの満月寺で方角は聞いてきたのだ。遠くはな
い。すぐそこ、すぐそこと海岸にそって北に向かう。郵便局があったらその左
手やったかな。目の前に一休和尚修行の地って言う看板が見えるやんか。
中に入ると誰も居てへん。
そこそこ大きな寺やけどひっそりしてて本堂のあたりは入り口が閉まってる。
これは普段公開してないんやなと分かった。わかったけどどうしようもない。
一休禅師が師に先立たれ悩みに悩んでやっと華臾宗曇禅師という師を発見しこ
こで修行することを許されたと言うんでなんかしらの感情に浸れるかもと思っ
たのは甘かった。さすが禅寺、自分で考えんと何も出てこんのだ。
わしは何も悟りを開いてへんからすごすごと帰らなしゃあない。
おっても何もすることはない。じっさいは何かといろいろあるんやろけどもう
気持ちに蓋が閉まってしまった。
うまい事いったら予定より1時間早い新快速へ乗れるなあ、そしたら昼飯ゆっ
くり食えるわなんて食い卑しい考えの方が先に立つ。
そんなら歩くよりやっぱりバスがええやろ。バス停まで急いだら幸いあと5分
で来ると分かったけど、列車の発車まで15分しかない。うまいこと乗れるやろ
かと気がせきだした。
先にバスを待ってるおばちゃんがいた。
やっぱり何かで急いでるんやろか。そわそわうろうろしてる。時々バスの来る
方に首を伸ばしてる。わしの動きも他人さんが見たら同じようなもんなんやろ
なあ。こんなときに限ってわずかに遅れてバスがきた。
そわそわしながらバスに座る。バスは意外と早い。
トイレに行く時間もあるほど余裕を持って駅に到着した。
新快速に乗って敦賀まで大体1時間強、敦賀から福井まで大体1時間弱の旅だ。
外の景色を見てたら全然退屈しいへん。
近江舞子を通って敦賀まで湖西の眺めはなかなか美しい。前の方におじいち
ゃん、おばあちゃん達の、と言うてもわしとそう歳は変わらんのやろけど、一
行が乗っていて賑やかだ。海外旅行に行った時の話なんかを楽しそうにしてる。
あ、そこわしも行った事あるで、楽しかったわ、わしも混ぜてほしなあなんて
思うけど、混ざったら混ざったで結構おつきあいはきっと面倒くさいのだ。
わいわい言いながら気がついたらもう降りてはった。
敦賀からは北陸本線に入る。
すぐに北陸トンネルに入る。えらい長いトンネルだ。
昨シーズン（一昨年12月）に白川郷へ行こうとここを通ったときは、「トンネル
を過ぎたら雪だった」んやけど、今回は殆ど雪がない。
あの柿の木、覚えてるわ。
遠くの山は真っ白やけど、武生を通って福井まで、道中殆ど雪がなかった。
大雪被害の報道が多いけど、このあたりは幸い大雪とは違ったんやなあ。
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