太宰治、「津軽」
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちっとも信用できません」
(太宰治、「津軽」より)
紀行文がこんな文章で始まっても太宰治の本だと何故か不思議には思わない。
むしろ、やっぱり太宰やなあって関心してしまう。
まずは序編からだ。
太宰の故郷とその近辺の近しい土地は行かなかったと書いている。
金木、五所川原、青森、弘前、浅虫、大鰐だ。
そして紀行文が始まる。
最初は「巡礼」
冒頭の文だ。一気に太宰ワールドに引き込まれる。
「蟹田」では白居易の詩が引用される。
何れの処か酒を忘れ難き。天涯旧情を話す。
青雲俱に達せず、白髪逓(たがい)に相驚く。
二十年前に別れ、三千里外に行く。
此時一盞無くんば、何を以てか平生を叙せん。
「外ヶ浜」では橘南渓の東遊記が引かれる。
「津軽平野」があって、
最後が「西海岸」だ
太宰の心の母、元乳母のたけに会いに行くのだ。
・・・・
次から次へと矢継ぎ早に質問を発する。私はたけの、そのように
強くて無遠慮な愛情の表し方に接して、ああ、私はたけに似ているのだと思った。
きょうだい中で、私ひとり粗野で、がらっぱちのところがあるのは、この悲しい
育ての親の影響だったという事に気付いた。私はこの時はじめて、私の育ちの
本質をはっきり知らされた。私は断じて、上品な育ちの男ではない。どうりで
金持ちの子供らしくないところがあった。
見よ、私の忘れ得ぬ人は、青森におけるT君であり、五所川原における中畑さんであり、
金木におけるアヤであり、そうして小泊におけるたけである。
・・・・・ (太宰治、「津軽」より)
小説のような紀行文であり、紀行文のような小説である。
やっぱりすごいわ。
フレッド・ヴァルガス、「彼の個人的な運命}
最近この人の本をずっと読んでいる。
パリの場末の街角にいるうらぶれた元娼婦のところへ不思議な男が迷い込んで
来た。どう見ても今新聞で騒がれている殺人犯そのものだ。
しかし純真素朴そのものの青年はとてもそんな人殺しには思えない。
しかも子供の頃、彼女にかわいがられて育ったと言う。
それで友達のルイ・ケルヴェレールのところに相談に行く。
結局は例の3人の男達、マルク、マティアス、リュシアンが暮らすぼろアパート
にかくまうしかない。
しかし殺人犯として追われている男をかくまうのはやばい。こうなったら真犯
人を探し出すしかない。
そのためには若者、クレマン・ヴォケールがどうしてここまできたのかを探ら
なければならない。
若者は少々知恵遅れにみえるのだ。
a-鳥
b-地面にいるミミズ
c-鳥の巣
d-木
連想をたどる。
そして、彼にゲームを教えたのは誰だ。
相変わらず登場人物達が魅力的だ。
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ありがとうございました。