ゆるーい、だらっとした坂のちょうど真ん中くらいにバス停がある。橋を渡っ
てたらバスに追い越された。「ありゃあ、行ってもた」、次のバスまでしばら
く待たないといけない。バス停に着いたら、わしより少々年上のようすのご老
人が先にバスを待ってはった。特に話も挨拶もしないでバスを待っていたら、
突然坂を下りきったあたりの物陰からピピピ・・と笛の音を鳴らしながら警官
が出てきて坂を下る車の前に立ちはだかった。
「もしもし、あそこで一旦停止しなかったでしょう」と坂の上の方を指差す。
「ちゃんと止まりましたよ」と運転していた女性が声を荒げる。
「とにかくあっちへ回って・・、ゆっくり話し聞きますから・・」と警官が言
う。
「でも、ちゃんと止まりましたよ」と女性は更に言いつのる。
「まあ、とにかくあちらへ回って」と警官も容赦をしない。
「可愛そうに」、ぽつんと老人が言った。
「ずっこいですよね」と私も言う。
いかにもと仕掛けた罠に、まんまと、悪気はないが油断した人がはまってしま
ったという構図に見える。
もっと悪気を持って違反する人をちゃんとつかまえる工夫をしたらええのにと
割り切れない気がしてならない。
それからしばらく、「気の毒や」とか「あれは汚いで」とか二人でぶつぶつ喋
ってたけどその人には何の助けにもならない。
その坂を下りきって、橋を渡った向こう側に松伯美術館があって、そこに行っ
てたのだ。松の木に囲まれた、美術館と言うよりは個人の邸宅といった瀟洒な
雰囲気の建物の中でそのときは、上村松園・松篁・淳之三代にわたる作品を展
示している美術館なのだが、その時は竹内栖鳳の特別展をやっていた。竹内栖
鳳の水墨画的な画が見たくていったのだが、そういう傾向の作品は殆どなかっ
たのが残念だった。しかし、前から見たかった上村松園のスケッチ帖が見れた
ので満足であった。
場所は、近鉄奈良線の学園前で降りて、5、6番のバスに乗る。坂を登ったり
下ったり、右に曲がったり左に曲がったりしながらほぼ各駅停車で大渕橋と言
うところで降りる。先ほど警官のいた場所だ。いつもいるとは限らない。私が
降りたときにはいなかった。ここで松伯美術館がよくわからない。案内板も見
当たらなかった。うろうろしてる間に後からきたおばちゃん達が橋を渡って行
くのを見て、きっとあっちだろうと着いていったらそこだったのだ。
車で行く人は一旦停止の標識に気をつけよう。
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