ジェフ・ダイヤー、「バット・ビューティフル」
ジャズに命をかけて、そして壊れていった男たちの物語りだ。
レスター・ヤング
・・・レスターのサウンドはソフトでレイジーだったが、そのどこかにいつも鋭いエッジが
あった。その音は常に、今にもほどけて分解してしまいそうに聞こえたが、決して
そうはならないことを彼は承知していた。まさにそこから緊張感が生じるのだ。・・・
そして、軍隊、彼は壊れた。
・・・まだ死んでもいないうちから彼は伝説の中に姿をけしつつあった。・・・
セロニアス・モンク
・・・音楽に関して彼は妥協と言うものをしなかった。世界が彼のやっていることを理解するまで
ただじっと待っていた。それは喋り方に関しても同じだった。彼の口にするもぐもぐや
もぞもぞの微妙な意味をまわりの人々がなんとか解釈できるようになるまだ、彼はただ
待っていた。・・・
昔、博多でこの人の演奏会を聞いた時、日本人をなめて馬鹿にしているのかと腹がたつほど
態度がわるかった。しかし、この本を読んでわかった。
もうすでに壊れていたのだ。
バド・パウエル
・・・相手が誰だろうとステージから追い落とす事ができた。バードだろうがデイジーだろうが
敵じゃなかった。何コーラスも続けてソロをとり、ビートに合わせて肩をすくめ、目を閉じ、こめかみの
血管をうずかせる。・・・
そして酒と麻薬が・・
・・・1人の人間の身にこのような激しい損傷をもたらす音楽という形態には何かしら恐ろしいものが
含まれているに違いない。・・・
ほんまそのとおりかもしれない。新しいものを創り続けなければいけない苦しみから逃れられない人達。
この人のピアノ、大好きやけどなあ。
ベン・ウェブスター、チャールズ・ミンガス、チェト・ベイカー、
アート・ペパー
・・・ジャズを演奏するのは黒人ばかりだと思ってた
みんなというわけじゃない
でもいちばん優れているのは黒人たちでしょう
彼の目に怒りが刃物のように煌めいた
もし彼の人生に目的というものがあるならそれはそのような通説を永遠に葬り去ることだった。
「間もなく俺はトレーンみたいになる。プレズがいて、バードがいて、そしてトレーンがいる。
その後にペパーが来るんだよ。・・・
今はもうジャズについてこんな風に語られるミュージシャン達がいなくなってしまったような
気がする。
ジャズも変ってしまった?哀しいなあ。
P・D・ジェイムズ、「策謀と欲望」
往年の本格推理小説。この人のダルグリッシュシリーズは大好きだ。
寂しい田舎の村外れで、女性を襲う連続殺人犯。
場所はイギリス、ノフォークのあたり、真ん中東の下の方だと思う。
海岸があって、海に突き出た崖があって、冷たい風はふきすさぶ村がある。
今は使われない風車小屋に住む人。
壊れかけた牧師館に暮らす人。
そんな生活の営みの中に原子力発電所がある。
そして殺人の芽も育っていたのだ。
昔、仕事で行ったことがあるノリッジという街も出て来る。いかにもイギリス的な古い
歴史のある街だ。その近くのローストフトというちいさな港町がなつかしい。
海の匂いのする、何となく保守的な感じの老人たちの町だった。
そういう空気がこの本のなかで蘇る。
近代的な施設と保守的な村、組織の中のしがらみ、暮らしの中の確執。
ゆきずりの犯行と、計画的な殺人。
さて、謎はとけるのだろうか。
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ありがとうございました。