カズオ・イシグロ 「わたしたちが孤児だったころ」
最初の三分の一位までは、かなり心配でした。
確かに軽妙な語りで話は進んでいくけど、このまま、こんな風で終わってしまうの違うやかと言う事でした。
ところが、話が上海に入って俄然面白くなりました。
主人公が少年時代を過ごした上海が生き生きと描かれています。
戦争前の混乱期の外国人居留区の暮らしです。
そこで、失踪した父、誘拐された母。両親が行方知れずで孤児になったまま成人し、探偵となって成功した主人公が、父母誘拐の謎を探るべく上海に乗り込むのです。
「霧のなかを疾走する車、中には、辮髪、長衣、黒眼鏡の中国人と背広を着た西洋人・・・・・」みたいな典型的な場面をつい想像してしまいます。
結末も、「ほう、そうなのか」、なかなかドラマチックです。
あの、南京路から、外国人居留区だった、旧虹口あたり。
舞台は好いですね。
思い重ねて、楽しめます。
黒田正子 「京都の意外」
「貴方は、京都の丸山公園にあるラヂオ塔を知ってますか?」
「そう言われてみれば、あのしだれ桜のところに何やらありますね」
あれが、ラヂオ塔というもので、昔はあれを取り巻いてラヂオ放送を聴いたものですよと言った話から始まります。
しっているようで知らない、京都の街の意外な由来、何故そこにあるの?、何故そういうの?といった話が一杯です。
とても楽しめます。
最近、あまり行かないけど、これを読んだら又行ってみようという気になる本です。
秀逸は、『70年代京都伝説のジャズ喫茶』
しぁんくれーる、52番街、ビッグビート、SMスポット、ビッグボーイ、蝶類図鑑、マンホール、シロハウス、ザボ、ヤマトヤ、ムスタッシュ、ギー、クエスチョン
懐かしい名前が一杯でてきます。
半分くらいは行った事があります。
我らの時代でした。
大阪の「デューク」、神戸の「さりげなく」・・みんなどこへ行ってしまたんでしょう。
**これからは毎週火曜にはできるだけ本の話をしたいと思います。