「時計泥棒と悪人たち」。
夕木春央 著。
蓮野は帝大の法科を卒業し、銀行に5ヶ月勤めたのち、泥棒になった。
いきなり大正が立ちあがる。
ええですなあ。のんびり長閑な古き良き時代。
でも、泥棒がいる。殺人犯もいる。
犯罪が起きる。
油絵画家の井口がつっこみ、元泥棒の蓮野が解きほぐす。
とても面白い。
・加右衛門氏の美術館
蓮野は帝大の法科を卒業し、銀行に5ヶ月勤めたのち、泥棒になった。
井口は油絵画家、同い年で12歳からの知り合い。
美術蒐集家で名高い浦川加右衛門氏が美術館を建てるらしい。
死を前にして? なぜ?
しかし、まずい。7年前に井口の父が置き時計を売った。これが偽物らしい。
なんとかせねば?
そして火事が?
さて、どうする? どうなる?
・悪人一家の密室
横浜山手にある700坪近い蓑田邸。当主の明良は日本にいない。しかし、近々帰るとの連絡。
そこに住むのは長男、幸正、妻なし妾が3人。長女、美知江、40歳、バツ2のわがまま娘。
次男、明正、37歳。昭彦は明良の従兄32歳、妻なし、週4度娼館に通う。末男、篤良、20歳、不良青年、2人こどもがどこかに。ろくでもない家族だ。そこに帰国予定の父から大量の荷物が。
おおわらわの中で、明正が首括り。
なぜ 自殺? もしかして他殺?
相談を受けた井口と蓮野。
謎が解けるか?、犯人は?
・誘拐と大雪 誘拐の章
ある日、井口の義兄一家の娘峰子が連れ去らhた。誘拐事件?脅迫状が来た。
金額指定がなり。貴金属など含めて、明日0時に金を持ってこい。双眼鏡も。
とても変だ。
銀行が開いてない日だ。
どうする?
どうなる。
とにかく金をかき集める。
一体何が狙い?
事件は意外な大事件に?
とても面白い。さてどうなる。
・晴海氏の外国手紙
フランスで亡くなったステファン・シャンプランからの手紙が届けられた。
会津藩家老の血縁、鞍川家の3姉妹、はるみ、つきよ、やよい。
激動の時代の彼女たちにいったい何があったのか?
悲劇の恋の行く末はなにだったのか?
銀座の大火事の後に何があったの?
とても面白い。
・光川丸の妖しい晩餐
1万トンあまりの大型貨物線、廃線になりかけ。
そこで妖しいパーティが開かれるそうだ。美食の果ての難儀な人たち。
虎2頭を食うというのだ。
猟奇趣味の秘密クラブ。客とコックをヨットで運んでパーティが始まった。
そして、いきなり殺人が?
さて、どうする?
さて、どうなる?
井口と蓮野の謎解きはここでも冴えるのか?
古き良きノスタルジックな時代の香りがプンプン。
とても分かり易い。
とても面白い。
わしの好きなおすすめ度。
星四つ。
「墨のゆらめき」。
三浦しをん 著。
思いは、森羅万象は文字に託され時空を超えて旅をする。
都内の老舗ホテルに勤務する続力は仕事で、招待状作成を担当する筆耕士が必要となる。
紹介されて訪ねた先は駅裏の怪しいところ。小さな書塾だ。
書家は遠田薫。
異色の書家だ。とても魅力のある字を書く。この人には何かがある。
そして、どんな筆跡でも書き分けることができる。
書塾の子どもたちにも人望がある。子どもは正直だ。
しかし、彼には影がある。何かを背負っている。複雑な人生があるらしい。
なぜ書家になったのか。
本気で書いたらどんなのが見れるのか?
すばらしい漢詩がすらっと出てくる。
劉商 送王永
君去春山誰共遊
鳥啼花落水空流
如今送別臨渓水
他日相思来水頭
詩の心が煌めいている。
杜牧 泊秦淮
煙籠寒水月籠沙
夜泊秦淮近酒家
商女不知亡国恨
隔江猶唱後庭花
さて、難しい事態が発生したのか?
ある小さなヤクザの組長の引退解散式の書面一式を書くという。
あえて。
なぜ。
彼の人生がそこのあるのか?
彼が背負ってきたものとは?
とても良い。
とても面白い。
今の現実の書家の世界ってけっこう面倒くさそう。
流派に所属してへんかったら、決して世に出られへん。そんなんらしい。
それが嫌で、中国で勉強してはった人を知ってる。
こんな人が現実にいたらとても魅力的だ。
出会ってみたい。
はらはらドキドキ、とても面白い。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ。
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