ホーチミン、フエの旅ー14

旅の道連れ
私の向かいの席は、40才前後の夫婦だ。奥さんが下のベッドで、
ご主人が上のベッド、荷物を下段ベッドに下に押し込んで上に登って行った。
しばらくすると降りてきて、二人並んで景色を見ている。
目が合った。奥さんの方が話しかけて来た。
「○△▼□・・・・・・」ベトナム語だ。わからない。まずいなあと思ったが
「すみません。日本人なんで、ベトナム語わかりません」
と英語で答えてみた。
すると、すぐに英語に切り替えて話してくる。
「すみません。ベトナム人に見えたんで、ベトナム語で話しかけたんです」
うれしいなあ。ベトナム人に見えたんや。あまりにも普通の格好をしてるからなあ。
話していると、20年アメリカに住んでいるとのことだ。
道理で英語がうまいはずだ。二人ともわたしよりはるかに流暢だ。
ミズーリ州カンザスシティに住んでいて、今回はちょっと帰ってきて、実家の
ホーチミンにいたあと、奥さんの実家があるニャチャンに行くところだそうだ。
約7時間、午後7時の到着だそうだ。
旦那さんはベトナム人らしく痩せて精悍な感じだが、優しそうな顔をしている。
人はよさそうだ。奥さんはちょっとふっくらしているがこちらも優しそうだ。
出発直前に入ってきたのは、商人風の中年の男で、私の上のベッドだが、登ったり
降りたり忙しい。しばらくすると上に収まってしまった。荷物は小さなブリーフ
ケースが一つだ。どこまで行くんやろ。
夫婦づれと言葉を交わしていたが、英語はしゃべらないみたいだ。
しばらくすると乗務員がやってきた。チケットのチェックだ。
皆と何か言葉を交わしているが、私はわからない。にやにやしただけだ。
ベッドに寝てばかりいるわけにもいかないので、時々座る。時々、通路にでて
外を眺める。向こうの方で中国語らしい言葉が聞こえている。
真ん中あたりは欧米人の家族のようだ。
列車は電車ではなくてジーゼル車のようだ。走る音とがたがた揺れる音、
乗客の話声、寝ころんで本を読んでいても、何だか心地よい。
列車のゴトゴトには旅情がある。