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毎週火曜は最近夢中で読んだ本、中島敦、ポール・セロー

中島敦、「李陵」  いか程の厚さもない文庫本で、しかも短編集。あっという間に読了かと思っていたら、  手痛く圧倒されてしまった。  ここに描かれた男たちの独立不羈、不撓不屈の生き様がまざまざと立ち上がってくる。  難解な漢語の羅列、しかし良く考えてみると、この場面を明確に表すにはこの言葉しか  ないと分かってくる。  力とリズム、透明感。こういうものが不足なく緩みなく打ち込まれている。  読み終え […]

「体感ヤマガタ」という本

山形映画祭の話を書いた「体感ヤマガタ」という本を読んだ 「山形国際ドキュメンタリー映画祭」というのが2年に一回、山形で 開催されているというのは前から聞いていた。 興味深々ではあったが、行く機会がなかった。何しろ100以上の国と 地域から集まったドキュメンタリー映画が1週間、いくつかの映画館で ぶっつづけに上演されるのを、次々に体力の続く限り見ていくのだそうだ。 映画好きにはたまらない催しだろう。 […]

最近夢中で読んだ本の話、保坂和志、小林秀雄

保坂和志、「もうひとつの季節」 日々の暮らしのおだやかさこそ、実は大いなる哲学なのかもしれない。 ここにいる赤ん坊がおとうさんで、いっしょに写っているのは猫だ。 赤ん坊が目の前のお父さんになったのなら、猫はどうなったの? 茶々丸とクイちゃん。 中野さん。松井さん。 美紗ちゃん。 普通の暮らしが、普通に流れて行く。 劇的なことはなにもおこらない。 ゆっくりとした時間の流れだ。 そこに、しっかりと存在 […]

最近夢中で読んだ本、ポール・セロー、カズオ・イシグロ

ポール・セロー、「九龍塘の恋」 香港返還といえば、もう遠い昔のような気がするが、そんなに古い話でもない。 香港から、中国に入ると、深センだ、更に入ると東莞とかいうところがあって、 中国の近代化と共に大発展してきたところだ。そこにある、ある工場の女子寮 で、その頃、春節休みで実家に帰った寮生が戻ってこない。「なんでや?」と 聞いたら、「「香港返還で英国が怒って攻めてくるから戦争になる。 危ないから帰 […]

最近夢中になって読んだ本、春江一也、徳齢

この作者の「プラハの春」を読んだ事がある。東西体制崩壊前の頃のチェコ ドイツ国境を舞台にしたスパイアクションも入った推理小説で、元外交官 だったという著者の専門知識がふんだんに入って面白い本だった。 こんどは、今話題の中国でも西の果て、ウルムチが舞台だ。 トルキスタンの独立運動の志士も出てくる。大分前の本なのに全く今現在 起こっている事のようだ。あの地にはそれだけ長く根が深い問題を抱えて いるのだ […]