さて、楽しく食って、飲んで、喋っていても終わりはくるのだ。
外に出て良い気持ちでふらふらと歩いていく。
行く先はいつも決まっている。
「湖月」という喫茶店だ。
この集まりで一番最初の頃、やはり終わってから、[お茶でも飲もうよ」という事になって
幾つかこぎれいな喫茶店を廻ったら、どこでも、「すみません、予約で一杯なんですよ」と丁重に断られた。
よっぽど妖しいやつらだったのだろうか?
団体がいやだったのだろうか?
それで辿り着いたのが、この店だった。いつきてもここでは断られないし、不思議と席は確保できる。
それで、また、和菓子を食べてお抹茶を飲んで、だらだらと過ごすのだ。
これが終わると、また行く先が決まっている。
人間は習性の動物だと言う事がよくわかる。
型にはまると他のことはできないのだ。
それはどうでもいいけど、桜餅は買って帰らないといけない。
ずっと前にこのメンバーの一人に教えてもらった「琴きき茶屋」の桜餅だ。
結構有名らしくて、店先で人が切れることがない。
桜餅は餡が入っていない。桜の葉の塩漬けの塩味と餅のやわらかなもちもち感がよくあってなかなか
おいしいのだ。
ところでこの店の名は「琴きき茶屋」となっているが、店のパンフレットを見ると、小督の局が
このあたりに隠れ住んでいて、その人の弾く琴の音を偲んでつけたと書いてある。
平家物語りの世界だ。
『・・・
峯の嵐か松風か尋ぬる人の琴の音か、覚束なくは思へども、駒を早めて行く程に、片折戸したる内に、
琴をぞ弾きすまされたる。
控えてこれを聞きければ、少しも紛うべうもなく、小督殿の爪音なり。
楽は何ぞと聞きければ、夫を想うて恋ふと読む、想夫恋という楽なりけり
・・・』
なかなか由緒深いところなのだ。
昨日の漱石の小説ではないが、このあたりの茶屋に「高島田」が休んでいたり、「想夫恋」の琴の音が
聞こえたりしても不思議はないのだ。
と言っても、おいしい桜餅とは何の関係もないのだ。
今は元気な人力車屋さんが声をかけている。
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