「三鬼」
小林恭二 著
天才俳人の流転の運命を描く。
西東三鬼。蝙蝠傘、白いカンカン帽に鼻の下の薄いヒゲ、レンズをつなぐ部分が金色の眼鏡をつけた男。
もう大分前になるけど、パリ在住の抽象画家、「松谷武判」氏の展覧会を見に行ったことがある。
その時に、西東三鬼にちなんだ一連の作品があった。
わしより一世代上の方、戦中派、パリに行く前は神戸、西宮に住んでられた。そんな縁で親しみを持ってはるのか、それとも、もっと何か関心を持っておられたのかはわからんけど、わしは、恥ずかしながら、その時初めて西東三鬼の存在を知って、彼に関する本をよんで、その数奇な人生にとても興味を持った。というようなことがあった。
俳人である。
異端の人。当時の大御所、高浜虚子に逆らうと、その世界では生きていけないというガチガチの流派社会のなかで、独自の道を切り拓いた。
独創であるのか。奇矯であるのか。
水原秋桜子に認められ、馬酔木にも参加。
サロン的な句会に出入りする。
シンガポール帰りのとんでもないプレイボーイ。
それだけではなさそう。
なんだか、とてもややこしい背景がありそう。そもそもなんでシンガポールに行ってたのか。行けたのか。
彼の一族って、実は・・・
普段の暮らしは特高につけられてる。この時代は、俳句が国家に逆らう輩と目をつけられてたのだ。何故?
三鬼の場合はそれだけではなさそう。他の機関にもつけられてる?
彼の家系はシンガポールやマレーシアを拠点とする中国系の有力者、プラナガンのある一族と親しい間柄らしい。国性爺合戦の鄭成功の流れをくむ人たちだ。
話はどんどん大きくなる。
とても面白い。
そして、三鬼は密命を受けて、再びシンガポールへ。
そして事件が・・・
とても面白い。
ワクワクドキドキ。
ええですなあ。

わしの勝手なお勧め度。
星四つ半。
「バウムガートナー」
ポール・オースター 著
バッハの無伴奏チェロ・ソナタのような・・・、静かで内省的なジャズ・ピアノのような
とても、静かで内省的な文章が連なる。
バウムガートナーは70歳。
わしより10歳若いくらいかな?
体の衰えを自覚し始めている。日々の暮らしが時に不安になる。そんな年頃。
電力会社の検針員が玄関でガタガタやってる。
もしかしたら泥棒か?
お手伝いのロシータが・・お母さんが大変・・お父さんが電動丸ノコで指を2本切ってしまった・・・
わしは・・
思い出されるのは妻、アンナのことばかり・・
ケープコッドの波に呑まれ 背骨を折られて死んだ・・
彼女の詩を毎日読んで暮らす日々・・・
何かの解説文には、バッハの無伴奏チェロ・ソナタのようなって書いてたけど、わしは、アーロン・パークスやポール・コーニッシュのような静かで内省的なジャズピアノを聴いてるような気がした。
とてもええですなあ。
珠玉の文章。
これから先、どうなるんやろ? とても不安な日々・・
わしかてそうやんか。
そして、最後の・・・

わしの勝手なお勧め度。
星四つ半。
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