「ショパン・コンクールの百年 世界に羽ばたいた覇者たち」
荻谷由喜子 著
巨匠達の誕生の瞬間が立ち上がる。
これは素晴らしい。
ドキュメンタリーである。
ショパン・コンクールの100年、5年に1回やから、去年で19回目の全てが網羅されている。
なんせ第1回が1927年やから、ポーランドにとってはとても厳しい時代だ。
第3回目、1937年から、もう日本人が登場してる。すごい。誇らしいですなあ。
第4回目は、戦争があって、1949年まで飛んでしまう。
というより、こんなに早く、よく再開できたものだ。
第5回目は1955年。あのアシュケナージが登場。わしでも知ってる人やからワクワクしますなあ。
そしていよいよ第6回目、イタリアから、ポリーニ登場。圧倒的な天才ですなあ。
第7回目は圧巻、マルタ・アルゲリッチが圧倒的な力で審査員たちを打ちのめした。
日本の中村紘子さんも快挙であったのに、霞んでしまった。
この本を読んでると、優勝を狙うような人には2つのタイプがあるみたいに思える。
A:この賞を踏み台にして、手っ取り早く、富と名誉を手に入れようと願ってる人。
B:これをきっかけに演奏家としての己の技術と感性を更なる高みへと極めようとする人。
こんな感じ。
Aが決して悪いというわけではないにしても、結局は壊れて行く人もいるみたい。
回を重ねていくあいだにアジア人の優勝者が出始めた。
そして、かのブーニンシンドロームが。
日本人の活躍も目立ってきた。
エエですなあ。とてもうれしい。
しかし、近年になると中国系の人たちが多いですなあ。
読んでるうちに、このコンクールにいろんな形で関わってる日本の個人や団体や組織が結構あるような、ピンポイントで個人が賞を狙ってる、それはもちろん当たり前なんやけど、それ以外にも、かたまりで盛り上げてるような感じにも受け取れる。結構貢献してるやないかって嬉しくなる。
このあと、最新の2025年、第19回まで、音楽に詳しい、ショパンに詳しい、ショパン・コンクールに詳しい作者ならではの視点で、優勝者や入賞者の戦いぶりや、その後の活動などが、生き生きと綴られていく。
なんだか格闘技の試合のドキュメンタリーを読んでるみたい。
とてもワクワク。
時に心揺さぶられ、時に腹立たしい。
とても面白い。
超分厚い本なのに一気に読んでしまった。
睡眠不足になりますなあ。

わしの勝手なお勧め度。
星五つ。
「砂上の王国」
坂井のどか 著
シルクロードの要衝の国、高昌国。独自の道を行くか、唐の国に靡くか。
20年前に、ウルムチ、トルファンに旅したことがある。
その時に、高昌城趾を見に行った。
とても懐かしい。
シルクロードの国だ。砂漠の真っ只中。火焔山とかある近くだ。
大きな城だ。というか街全体が城の中にある。
今はもう何もない。土と石の塊がかろうじて、家屋敷だったり、役所だったりの建造物を思わせる形だけを残して、土に帰りつつあるような感じであった。

まさに兵どもが夢の跡ですなあ。
これほど見事に土に還れるとは。

あの有名な玄奘三蔵法師がインドへの旅の途中で立ち寄った国でもある。
この本の時代の少し前やろか。
手厚くもてなされ、何年かここで過ごした。
しかし、彼はインドに行かんとあかんという使命がある。厚遇を断ち切って出発した。
そして、目的を果たして、帰りに又、この国に寄ったら、もう滅びていた。
それから、ずんずん時間が経ってこうなってしまった。
この本の中で輝いた国も、同じくこんなになってしまった。
全くの土塊だ。
金属も殆無いし、プラスチックなんか全くない時代の話。
土に還るとはまさにその通り。
儚いもんですなあ。
本はとても読みやすい。わかりやすい。

わしの勝手なお勧め度。
星三つ半。
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