一撃必殺(いちげきひっさつ)。
さて、若者が立ち上がった。
ピアノの前に座る。古ぼけたアップライトのピアノ。
ピアノだけ。第一撃。
その場の全員、いきなり心を掴まれた。凄まじい。
素晴らしい。衝撃的。
ジャズ。スタンダードでもなんでもない。
完全なオリジナル。ビパップとか、ノリノリとか、そんな生ぬるいやつではない。
強いタッチで、美しい音色で、高く、低く。繊細に、抒情的に。
ええですなあ。
失礼ながら、こんな場末で、こんなシチュエーションで、ジャズライブを聞くのは初めてやったし、こんな素晴らしい演奏を聞くのも初めてだった。
ピアノはこの喫茶店の店主さんが娘時代に使ってはったやつだという。普段は家のステレオを持ち込んでジャズを流しているという、とっても手作りなジャズ喫茶。
たまたま、映画の帰りによったのがその喫茶店。
よくぞまあ、こういうのが存在してるんやわと感心と感動をしつつ、ときどき行くようになった。
ほとんど常連さんばっかり、身内ばっかりの、わしにとってはアウェイではあるが、爺さんは酔っ払ってごまかす。
店の名は「パノニカ」。店主が好きなセロニアス・モンクのパトロン、ニカ男爵夫人の名前をったのだ。メッチャマニアックで魅力的な店。
適当な音響ではあるけど知識はすごい。いろいろ教えていただいた。
この日は、事前に知ってたわけではないけど、たまたま行ったらライブをやるという。
知り合いのピアニストが弾いてくれることになったという。
それが、この演奏。
素晴らしい。
うろ覚えながらどっかに留学しててたまたまかえってたとか・・・知らんけど。
きっと名のある人、あるいはきっと後で有名になった人やと思うけど、残念ながらわしはこの世界にはうとい人間だ。
素人ながら、こんなええ演奏は初めて聞いた。
とても良い経験だった。
たまには、有名なジャズ演奏家のライブを聞きに行ったりしたこともあるけど、そういうのとはまた違ったシチュエーション。
なんだか忘れられない。だからよけい後付け妄想が膨らんでしまう、貴重な思い出であった。
いきなりガツンとやられるってとってもええですなあ。
因みにこの店はこのあとすぐに閉店。
花の命は短くて・・・
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