「対馬の海に沈む」
窪田新之助 著。
「JAで神様と呼ばれた男の溺死。執拗な取材の果て、辿り着いたのは、国境の島に蠢く人間の、深い闇だった。」
とても面白いノンフィクション。ぐんぐん惹き込まれて一気に読んでしまった。
今、令和の米騒動が世間を騒がせている。
なんだかようわからんけど、コメ流通の不透明さも大きな要因に思える。
JAをめぐる深い闇を指摘する人たちも多い。
たしかに、備蓄米の価格をめぐる騒動のウラに、何もわからん素人さんに、あんまり口出しされても何も変わらんし、迷惑なだけやと言わんばかりの意向がJA側からチラチラ見える。
実は、なんか、ウラに深い闇があるんではないかとわしら一般大衆はつい思ってしまう。
この本を読んでると、ほんまにそうやろ、組織としてなんかおかしいんちゃうやろかって納得してしてしまうところが多い。
2019年2月25日、西山義治という男の車が、岩壁から落ちて、亡くなった。
事故とは思い難い。何故?
彼はJAの局員 共済事業の部門でLA(ライフアドバイザー)を担当。
LAの甲子園と言われるJA共済優積ライフアドバイザー全国表彰式で何度も表彰されている男であった。
担当職場は長崎県対馬。人口3万人足らずの小さな島で、常に全国トップレベルの契約成績を挙げている男。
なぜ、そんなことができるのか? できたのか?
著者が切り込んで行く。
実は少し前に不正が発覚している。
台風災害を装って、保険金の不正請求があったのだ。西山が関与しているらしい。
これをきっかけに次々と似たような不正が発覚していく。
ついに、22億円もの巨額の横領事件に発展していった。
当然、第三者委員会が設けられ、真相究明が始まった。
JAの共済事業(生命保険、損害保険など)、信用事業(貯金受入、資金貸与)などを舞台に西山が繰り広げた、大掛かりな、緻密な詐欺行為が明らかになっていく。
しかし、著者は納得できない。
これだけ大規模なことを長期に渡って成し遂げた裏にはなにがあるのか。
本当に1人だけでこんなことができたのか。
彼を駆り立てていたものは何なのか。
なぜ、だれもが、通帳印鑑まで彼に預けぱなしにしていたのか?
積極的にか、消極的にか加担して利益を得た人たちがいる。
まあええじゃないのが蔓延する?
ノルマの問題もある。JAの過酷なノルマは有名らしい。担当者は自爆営業するしかない?
その泥沼から抜け出せない。
それを助けてくれるなら・・・
今になって暴かれたら組織が困る・・・
隠蔽体質が根強い?
そんな中でも告発者はいた。
かれらの声はなぜ届かなかった?
筆の力がどこまで、掘り起こせるか・・・・
世の中を動かせるのか・・・・
考えさせられることが多かった。
今の米騒動で、JAの基本になる経済事業(物品販売、農畜産物などの集荷、出荷)の中に潜む大きな暗闇が可視化されたらええなあって思う。
今のどんな報道も分かりにくい。多分、記事を書く人がわかってない。
だれか、気骨のあるライター、ジャーナリストが探求して明らかにしてほしいと願う。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ半。
「彼女を見守る」
ジャン=バティスト・アンドレア
「旅立ちについて語ってくれ。一曲歌ってくれ。灯のもとで、フラ・アンジェリコの絵を見ることができたんだから」
とても面白い。
軽快なスピード感でどんどん読んで行く。起伏が大きく、意外性が高い。
次々と謎が解かれていく?
果たして、彼女とは?
ミケランジェロ・ヴィタリアーニ。ミモと言われた男。
死の床で思い出すことは?
ある日、ある時、墓場の石の上で彼女の手を握った時。彫刻家になることを確信する。
同じ年、同じ日に生まれたものたち。宇宙兄弟。
言わなくてもわかる。信じるしかない。
窓に赤い灯が・・
彼は背が短い。誰もが大きくなっていくが、彼はならない。
少女は、本当は魔女なのか? 森の熊は幻なのか?
ミモはアルベルトおじさんの元へ。しがない徒弟生活。
世の中は戦争の時代へ。
ファシストのイタリアに。
熊と少女の彫刻がオルシーニ家を動かす? 庇護が得られる?
彼は彫刻家として翔けるのか・・・・
空を翻んだのは誰だ・・・・
彼を駆り立てるのはあの時見たフレスコ画なのか・・・
ミケランジェロのピエタ像が語るものは・・・
そして究極の・・・・・
とても面白い。
ミモとヴィオラ。
究極の恋人たち? 宇宙兄弟?と
ても面白い。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ半。
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