最近読んだ本、「凍」、「奥の細道」

  • 2018年12月11日
  • 4人

沢木耕太郎、「凍」
角幡唯介の「空白の五マイル」、「極夜行」など人間の極限に挑む冒険行の物語は
フィクションでは得られない独特の臨場感と高揚感があってワクワクして読んでしまう。
この本を図書館の書棚で見つけた時は同じような予感がして嬉しくてすぐに借りて
しまった。沢木耕太郎のノンフィクションは旅物が好きで出たら必ず読んだりしてる
けど、こんなやつもとても面白い。特に今回は山登りの話だ。自分では軟弱なとこ
しか行かれへんけど本で読んだり、映画で見たりは大好きだ。

舞台はヒマラヤ。
山野井泰史、妙子という登山家夫婦がいる。世界に知られた先鋭アルピニストらしい。
登山隊を編成して大規模な荷運びをしながらキャンプを1つずつ進めて行って頂上に
迫るというやり方ではなくて、1人または少人数でささっと登ってしまうという
やり方をしてる人たちだ。口で言えば簡単そうやけど、想像を絶する体力と精神力と
登攀技術が必要というのは誰にもわかる。
それでも時には、天候の急変、雪崩、落石などなどで事故に会い大怪我をしたり
凍傷で指を無くしたり、死に至るときもある。それでも山に行く人達はそれを
やめられへんらしい。難儀なことだ。
この時は、ギャチュンカンというネパール、チベット国境にある7952mの山だ。
今どき未踏の山なんて存在しないはずなんで、冒険家たちはより険しい未踏の
ルートを目指のだそうだ。此の時は北東壁を目指していた。夫婦別々の挑戦だ。
しかし、最後は状況が許さず二人で北壁を目指すことになる。
さて、この登山はどうなるか?
はたしてどんな困難、試練が待ち受けているのか?
腹柄ドキドキ、手に汗を握る場面が続く。
結果がわかってるのにドキドキが止まらないのは筆の力だ。
果たして北壁登頂は可能なのか?
果たして二人はベースキャンプに帰りつけるのか?
凄まじい吹雪の中で凍傷はどうなるのか?
ギャルツェンの手料理が食べられるのか?
とても面白い。

リチャード・フラナガン、「奥の細道」
とてもすごい本だ。素晴らしい。
読む前は大きな勘違いをしていた。日本の俳句や文学に共感した外国の人が
芭蕉の足跡をたどるような話なんやろかなんて簡単に考えてた。
ぜんぜん違う。
泰緬鉄道建設にかかわるとても血なまぐさい、凄惨な捕虜虐待労働の話だ。
泰緬鉄道というと第2時大戦中に日本軍がタイからビルマ(今のミャンマー)まで
軍事物資運送用に作った鉄道であった。
タイのノンブラドックを起点に今も残るカンチャナブリを通りクワイ川を渡り、
ヒントク、スリー・パゴダ・パスを通ってミャンマーのタンビュザヤに至る
長大な路線だ。その工事は凄まじく困難なものだったらしい。しかも戦争目的やから
急を要する。機材は貧弱、資材も不足の状況では人力と精神力を使うしか無い。
昔の日本軍のやり方だ。捕虜や強制徴用の労働力を大量に投入して凄惨な工事が
行われた。
ドリゴ・エヴァンスはオーストラリアで結構ロマンチックな暮らしをしている。
恋の悩みもある。人生の波風もある。
軍医としてして出征したあともいろいろと悩み多き人生だ。
ところが音信が途絶えた。日本軍に捕まってビルマに送られたのだ。
そこで彼が見たのはこの世の地獄だった。
奥の細道とはこの世の地獄を巡る旅だったのか?
俳句を愛で、侘び寂びを愛する日常を持つ我が身を矜持とする日本軍の将校が
おなじ心でやってることはいったいなになのだ。
軍という狂気がなせるものなのか?
ヒロポンがもたらしたものなのか?
すごい、強烈なメッセージを与えてくれる物語だ。
究極の環境の中で人はどこまで人でなくなるのか?
人はどこまで人であり続けられるのか?
読んでよかった。

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ありがとうございました。