「痴心妄想」
中村文則の「列」という本を読んだことがある。
いつの間にか列に並んでいた男。なぜかはわからん。
周りの誰もわからんらしい。列は長い。果てしなく長い。先に何があるのかわからん。
後ろに何があるかもわからん。
列はいつまで経っても動かへん。いつどうなるかわからへん。
凄まじい話ではないか。
人生そのものみたいでないか。
列が動いた。離脱者がでたのだ。
最近は、食いもんの列にしか並んだことがないなあ。
先がわかってても長い。腰が痛い。売り切れることもある。
そういえば、某隣国を旅したとき、昔の話だ。チャーター車で田舎道を移動してた。
広い道もあれば、田舎道もある、交錯した道路をあちこち走っていく。
ある時、何かで渋滞が始まった。それからが大変。
おとなしく列を作って待つなんて車はほとんどおらへん。自分だけ1mmでも先に行こうと横入りやら、無理な追い越しやら、何やらかやら、一瞬でデッドロックが起きる。
それが、あっちでもこっちでも、すんなり譲り合えば、なんとかなりそうなところでもデッドロク起こしまくり。
わしらはいつ先に進める?
また別のある日、ある時、その国の有名な街角食堂。食券を買ったのはいいけど、もらうのはたった一つの窓口。だれも並ぶ人はおらへん。一斉に窓口に殺到。1mmでも前に券をつきだそうと手をのばす。モノがきたら奪い合い。料理一皿で死にもの狂いか?
わしはいつ食える?
さて、わしは今、人生の行列のどのあたりにおるんでしょうか。
そろそろ離脱の時ですかな。
かなわぬ夢と妄想の果てですかな。
「浮生若夢」
ある時、えらく寒い地方に旅したことがあった。お隣の国の話。
普通の冬は-30度ほどにもなるらしい。その時は幸い-15度くらいだった。それでもなれないわしには痛いほどの寒さ。たまらずにあるレストランに逃げ込んだ。言葉はわからへんけど幸い写真メニューがあった。
うれしい。
熱々の美味しいもんを食いたい。いろいろある。楽しい。
中でも目を引いたのは、一見カキフライというか、天ぷらに見えるようなやつ。
外がふんわりサクサクそう。中がぽってりジューシーそう。
何かはわからん。同行者は説明してくれへん。ニヤっとしてはる。
さっそくソレがやってきた。
さっそくいただく。
???、たしかにサクサクジューシュー的ではある。しかし、わしにとってはなんともいえないエグさを感じる。食ったことがない。
いやな感じ。同行者たちはワイワイとうまそうに食ってはる。特にその国の人は満足そうだ。
わしは、よう食わんと吐き出した。
聞いてみたら、これは蚕だそうだ。そういえば寒い国では蚕は好んで食べられると聞いたことがある。いやはや失礼。ちょっときつい洗礼であった。食わず嫌いかもしれんけど、わしにはダメやった。気持ち悪い。
きっともう食うことはないやろ。
そう言えば、「浮生六記」っていう中国のとても美しも、哀しい物語がありましたなあ。
夢や夢
夢や夢 現や夢とわかぬかな いかなる世にか 覚めむとすらむ
新古今和歌集 赤染衛門
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