「台湾漫遊鉄道のふたり」。
楊双子 著。
「万巻の書を読み万里の道を行く」
昭和の頃の話だ。まだ台湾が日本統治下だった頃の話。
この時代にあって自由奔放な女性千鶴子は、我が身を持て余してる。結婚はしたくない。周りはうるさくてしょうがない。何をしても干渉がある。どっかへ逃げたい。
しかし、流行作家になってしまった今、自由がきかへん。
さて、もっけの幸か、台湾旅行が降ってわいた。
台湾在住の日本人社会から後援依頼があったのだ。
さっそく台湾へ。
さっそく飛び跳ねたいけど、大作家が来たからにはと向こうも接待に手ぐすねを引いている。
なんとか自由を。
画策するうちに、通訳の王千鶴と親しくなった。彼女に専属の通訳兼案内人となってもらう。
接待の隙を盗んで二人の台湾珍道中が始まるのだ。
鉄道に乗って、美味しいモンを食いに行く。
なんと素晴らしい。
しかも千鶴さんは台湾の地の料理、昔ながらの食べ物にめっぽう詳しいのだ。
しかも誰に習ったか、料理の名人ではないか。
食いもんの事なら負けてはならじと千津子女子も大張り切り。
食いもんもええけど、温泉も良い。
台湾の歴史を物語るとこも行きたい。
鉄道の旅がとても楽しい。
その頃の台湾が立ち上がる。
すばらしい。
しかし、千鶴子と千鶴、とても仲がいいのに、どこかギクシャク。
千鶴の心に何かが鬱屈してる。
天真爛漫な千鶴子は気が付かない。
しかし、その頃の、日本人と台湾人の間にあるもの。
心の中にあるもの。
個人的には何も差別的な感情を持ってなくても、心の中に染み付いたものがあるのか?
それは何なのか?
国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差―――
どうすればハードルを取り除けるのか?
さて、千鶴子はどうする。千鶴はどうなる?
二人の旅は?
いろんな名言、格言などがでてくるのも楽しい。
目次はこんなの。
1 瓜子 瓜の種
2 米篩目
3 麻薏湯 黄麻の葉のスープ
4 生魚片
5 肉燥(月篇) 肉の旨煮
6 冬瓜茶 冬瓜の甘いお茶
7 咖喱 カレー
8 寿喜焼 すき焼き
9 菜尾湯 〆のスープ
10 兜麺 五目寄せ餅
11 鹹蛋糕 しょっぱいケーキ
12 蜜豆冰 氷蜜豆
台湾の美味いモンの話が満載だ。
とても興味深い。
夢中で読んでしまう。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ
「箱男」。
安部公房。
都市には異端の臭いがたちこめている。
都市には異端の臭いがたちこめている。人は自由な参加の機会を求め、永遠の不在証明を夢見るのだ。そこでダンボールの箱にもぐり込む者が現れたりする。かぶったとたんに、誰でもない存在になってしまえるのだ。・・・・・・・
ーーーー著者箱書きより。
とても古い本だ。1975年にこれを読んだって本に記入してあった。50年ちかいなあ。
ふと思いついて、読んでみた。
なんで思いついたかと言うと、先日、「ハンチバック」という本を読んでぶっ飛んだという話をした。その時に、なぜかこの本を思い出したのだ。
不自由な存在から非存在の視点にうつしてモノを見る。
誰もが見れへん世界を見せる? これでもかと止めを刺して見せる・・・
「箱男」をあらためて読み直して。
やっぱりすごい。
強烈だ。
全然古臭くない。新鮮に読んでしまう。箱男の魅力健在だ。
ある日、突然、ある男が箱に入る。箱男誕生だ。
しかし、世の中には箱男が他にもいるようなのだ。
どんな箱がいいのか? どうやって箱を作る? 快適な箱とは?
快適な箱暮らしとは?
どうやって暮らす。何を手元に?
あらゆるノウハウが詰まったのがこの箱なのだ。
そして、ある日、わしが襲われた。
そして、ある日、箱を買うという人間が現れた。
なぜ? 何のために? 誰が?
そして偽箱男登場。
?どっちが本物?
すべては箱男がノートに書いてる?
とても面白い。
あらためて素晴らしい。
わしの勝手なおすすめ度。
星五つ。
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