「土と内臓」。
デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー著
みんな微生物が作り出していた!
最初は、サイエンス系解説本、あるいは入門本みたいな感覚で読んでた。
そういうもんかもしれん。けど、なんだか難しい。わからんけど興味あるなあ。
そのうち、えらい惹き込まれてしまった。
生物の進化なんて、個体の変化を辿ってしか想像してへんかった
しかし、ありとあらゆる生き物には微生物が関与しているのだ。
きっかけは地質学者の夫と生物学者の妻が住むために買った、シアトルの荒れ果てた土地だ。
彼らはそこを、耕し、花を咲かせ、作物を育てる。
荒地との戦いだ。自然のちかと有機物で少しずつ得るものが増えて行く。そして、自然の力を理解して行く。植物の根の力、根にまつわる微生物の力を理解していく。
そして、ある日、妻が癌になった。それが、食べ物との関係をめざめさせることになる。
人の内臓の微生物の働きは、植物の根の働きと同じなのではないだろうか。
土の中の微生物に目覚めた彼らは、植生との関係を深く見つめて行く。そして、体の中の微生物の働きにも関心を深める。
なんだか、今まで全然気にしてなかった世界だ。とても興味深い。
なんでもかんでも知らない菌は悪いやつだ。見つけては殺してしまえなんて感じが、今回のコロナ騒ぎで気になってた。マスクに消毒、外出禁止、おしゃべり禁止、ある程度は必要なんはわかるけど、そういう事はすぐに自粛警察みたいな圧力につながっていくんではなかろうか。
いいモノもわるいモノもうまく共生する道はないものやろか。
そもそも、この本を読んだきっかけは、わしの家の庭だった。
毎年、毎年、雑草が強烈に蔓延ってしまう。これをなんとかせんとあかんって思ってた。
雑草は生命力が強い。刈っても刈っても生えてくる。
根絶やしにしようと思ったら、根を、球根を抜いてしまうしかないのか?
それをやろうと思ったら、並大抵の体力ではできへん。薬は使いたくないしどうしようなんて思ってた。
そんな時、家庭菜園を楽しんではる友人に相談したら、「不耕起栽培」って考え方があるんやでって教えてくれた。
根は抜いたらあかんのや。根についてるバクテリアが土を肥やす。これが大事なんや。
葉を刈って枯して堆肥にすればいい。自然循環で作物は育つというのだ。
そして、参考にとこの本を紹介していただいた。
なるほど、なるほどだ。
わしは、無くすことばっかり考えてた。根こそぎ根絶やしにすることなんてできへんし、せんでええのだ。
ビシッと鏡のような庭にする必要はない。要らんもんが生えてきたら、その都度、葉っぱを切ったらええんとちゃうやろか。光合成できへんかったら自然に弱っていくやろ。
そんな、感じでゆるゆると共生していったらええんではなかろうか。
何より、雑草の名前を覚えんとあかんなあ。
もっと植物の勉強をしよう。
いろいろ勉強になったし、小説を読むような楽しさがあった。
とても良かった。
わしの勝手なおすすめ度。
星4つ。
「キネマグラフィカ」
古内一絵著。
映画がフィルムだった頃。
映画がフィルムだったころ、老舗映画会社に勤めた同期六人の物語。
わしらの世代は、映画はフィルムでしか知らない。
聞くところによればいつの間にかデジタルになってしまってる見たい。
デジタル画像がフィルム画像を凌駕するようになるとは簡単に想像できたけど、プロジェクターが劇場映画に通用するようになる時代がきたのは驚きだ。
わしは、家電メーカーに勤めてたんで、黎明期の商品開発の苦労は横目で眺めることができた。
あの頃を思うと隔世の感があるけど、開発する人たちからみたら自然な流れなんかもしれん。
なんと言うても撮影機器がデジタル自体がデジタルになって行ったんやから当たり前だ。
この話は、まだ、映画がフィルムだった頃、しかし、映画業界自体が落ち目になりかけた頃、つまり、昭和から平成に移り変わった頃の話だ。
落ち目になりかけたとは言え、まだまだ、配給会社の営業活動は昔の名残を残していた。
彼らは、それぞれの思いを抱えて、仕事についている。
平成のサラリーマンの暮らし、夢もあれば希望もある挫折もある。
でも、そこにはなんと言っても映画があった。
なんて、ことで、映画にまつわる思い入れが思い切り展開されると期待して読み始めたけど、なんだかちょっとガッカリ。
かなりガッカリ。
彼らのキャラクターで青春グラフティはたしかに盛り上がって、楽しいけど、キネマフラフィカと言うには寂しいのではないか。
映画は好きやけど、専門知識は全くないわしにとって、映画を見る楽しみやら、制作者の裏話や、素人にはわからん話を期待してしまう。
わしが勝手に期待しても、事態はそううまく運ばへん。
てな、お話でした。
わしの勝手なおすすめ度。
星3つ。