澤田瞳子、「輝山」。
私は金吾、石見国の大森代官所に勤めるただの中間だ。新任の代官、岩田鍬三郎に
ついて江戸からやってきた。
初めての銀鉱山の暮らしだ。元締め手代の藤田孝蔵に厳しく追いまくられながら
慣れない日々を送る。しかし、私にはもうひとつ秘密の使命がある。
前の上役、小出儀十郎から、岩田鍬三郎の身辺をさぐって落ち度を見つけろと言う
司令があったのだ。しかし、そっちの方が捗々しくない。
なんせ、岩田はつかみどころがない。のほほんとしてなにも考えてないようで、
なにかと心配りが行き届いているようでもある。なんでもかんでも手代に任せきり
のようでもあるけど、帳簿などは実はすべて目を通してるようだ。
鈍重に見えてじつは鋭いのかもしれん。
鉱山の暮らしはとても厳しい。日々死との隣り合わせでもある。
鉱山は一つではない。たくさんの山師(山主)がそれぞれに堀子をやとって
銀を掘り出している。どの山師の元で働くか? 給料がいいのか?
安全なのか?
そして吹屋というのがある。いわゆる製錬所だ。銀吹師の技が品質を決める?
いい山師と悪い山師との葛藤、堀子たちの諍い?
山師と吹屋のかけひき?
日々の暮らしと命がかかってる。
そんな彼らの腹を満たす飯屋もある。飯を食い、酒を呑んで、山に入る。
ギリギリの暮らし。
堀師の命は長くない。鉱山労働の宿命か? 独特の肺の病で殆どの男たちは
若くして死んで行く。それがわかっていても、承知の上で男たちは山に入る。
すさんだ男たち、女たちの世界。事件、軋轢は次々に起こる。
男と女のいさかい。金と権力をめぐる諍い。流行病。
お国替えになった浜田藩の事件。
無宿人たちの仕置き。
さて、岩田代官はうまく捌き切れるのか?
金吾はどうなる? 小出の企みとは?
とても面白い。
銀鉱山の暮らしがまざまざと立ち上がる。
ジェフリー・ディーヴァー、「オクトーバー・リスト」。
とても異色のミステリーだ。
事件の最終現場から物語が始まる。
サムとガブリエラがいる。
ガブリエラの娘サリーがジョセフという男に誘拐されたのだ。
男は50万ドルの金を要求してる。そしてオクトーバーリストも。
50万ドルの金は持ってなさそう。オクトーバーリストはあてがある?
でもそれって何?
今、ボーイフレンド、ダニエルとアンドルーが男に会いに行ってる?
そして、だれかが入って来る?
「お願い教えて、娘は無事なの?」とガブリエラが叫ぶ??
さて、ここから不思議な流れになる。話はすこしずつ戻っていく。
1時間前、2時間前・・・半日前・・・1日前・・・・
とても不思議な展開だ。こんなのは初めてだ。
探偵は登場しない。
謎を解くのはだれだ?
時間を遡ることで、謎解きとはまた違うプロセスで読者に推理ができるようになっている。
とてもユニークだ。
逆向きの謎が謎を呼ぶ?
身代金ってなぜ値上げされたのか? 本当に調達できるのか?
ダニエルとは何者か? サリーが生きてるってどうしてわかるのか?
本当に切実なのか?
オクトーバ・リストって一体何なのか? 何のために存在するのか?
誰の利益になって、誰の不利益になるのか?
アンドルーとは誰か?
スラニ刑事とケプラー刑事っていったい誰なのか?
次ぐ次と意外な展開。というか、意外な前提に戻っていく。
とても面白い。
スピーディにリズミカルに話が後ろに進む。
とても面白い。
最後はあっと言うぞ。
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ありがとうございました。