最近読んだ本、「震える牛」、「ゆらぐ玉の緒」

  • 2018年11月13日
  • 2人

相場英雄、「震える牛」
とても面白い。読みやすくてスピード感があって、ハラハラする。正義感も一緒に
くすぐられて、感情移入しながた読んでしまう。
捜査一課に継続捜査班というのがあるらしい。お宮入りしそうな事件をもういちど
しらべてみるという仕事らしい。担当の田川信一がとりあげたのが中野駅前強盗殺人事件
というやつだ。
もう一度聞き込みから始める。思い込みは間違いの元だ。
調べてみたらどうもおかしい。居酒屋で不良外人による行きずりの犯行? そんなんとちゃうで。
ベンツで来たやつがいる? 行きずりでベンツで来るか? すこしずつほぐれてくる。
被害者も徹底的に洗おう。被害者は二人。
本当に偶々か?
獣医と産廃業者、何か関係があるのか?
関係者が次々に出てきた。誰が事件に関係があるのか? 何が事件に関係があるのか?
スナックのママが何かを見てる。
そして少しずつ何かが解きほぐれてきたのか? 肉のチェーン店が何か関係有る?
バブルに乗ってどんどん大きくなる影に何かあるのか?
処理工程は大丈夫なのか? 品質に偽りは無いのか? 妖しい加工が施されてないか?
競合相手はどうやって叩き潰すのか? チェーン店は果てしなく増殖していくのか。
それが成功の証なのか?
いままで新聞やテレビで問題になった、話題になっていろんな、なるほどあるあるの
形で現れてきて分かりやすい。
いろんな疑問が調べていくうちに何かにつながっていく。
もしかしたら外国人による行きずり殺の事件どころか、巧みに仕組まれた悪意ある殺人
なのか?
とても面白い。よくありそうな業界の裏のブラックな部分をわかりやすくえぐり出して
ともに悪と戦う気分にさせてもらえるのがええんかもしれん。

古井由吉、「ゆらぐ玉の緒」
短編小説集のような、エッセイ集のような、年寄りの戯言のような、
風雅なつぶやきのような、知識人の知的な心の移ろいのような、ただの知識自慢の
ような。
さすが大小説家、すごいなあと思いつつも、メッチャ気取ってはるやんと思いつつも
悔しいけど心惹かれる言葉や引用が多い。さすがやなあと思う。
後の花
見ぬ世まで思ひのこさぬ眺めより
昔にかすむ春のあけぼの
風雅集 藤原良経
道に鳴きつと
我が後の世の近くなる道
かのかたにはや漕ぎよせよ郭公
道に鳴きつと人に語らん
人違い
戦時中、空襲の中逃げ回って、やっと一息ついたとき、見知らぬおばちゃんから
いただいたおにぎりの話。
時の刻み
乱さぬがよい。この自然の祝日を。これは自然が手づからおこなふ
刈り入れにほかならない。
フリードリッヒ・ヘッペル
野辺を見るになほあまりゆく心かな
秋より外の秋の夕暮
慈圓
年寄りの行方
ゆらぐ玉の緒
玉の緒も千尋にゆらぐ春日かな
初春の初子の今日の玉箒
手に執るからにゆらぐ玉の緒
大友家持
かげろふや塚より外に住むばかりー内藤丈草(古)
芥川龍之介「点鬼簿」
孤帆一片
孤帆一片日邊来
李白 天門
その日暮らし
寂寞(じゃくまく)と昼間を鮓のなれ加減
蕪村
生滅滅己、寂滅為楽 涅槃経
今を語りながら、時空を行きつ戻りつ自由自在、時にはこういう話もええもんです。

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