曹霑/伊藤漱平訳、「紅楼夢(上)」
念願の本をやっと読み始めた。前から、「良い本だよ」と言う事で、「読みたいな」と
思っていたが、何しろ長い。文庫本でも十数冊あるし、揃って売っていない。
しかし「読もう」と思い立ってしまったので、本屋を探し始めたら、無い。
結局、古本屋に行って見つけた。大きい本で3冊の大長編だ。
最初は少し退屈気味。神様やら仙人やら道士やらが沢山出てきて、この話の由来を
紐解いていく。
そして、いよいよ玉を抱いて生まれた「賈宝玉」が登場する。
美少女のヒロイン、林黛玉、薛宝釵達も登場して、栄国邸で絢爛豪華な生活絵巻が始まる。
誰かが何をしてどうなってという筋立てを中心にした物語ではなくて、主人公達を
中心とした日々の生活を克明に精緻に描いた物である。
どんな時にどんな催しがあって、その時に何を着て、その衣装の材料はどうだった
色はどうだった、飾りはどうだった。又何を食べて、その味はどうだった、香りは
どうだった、作り方はどうだった、材料はどうだった。それに、家具はどうで、
部屋飾りはどう。骨董はこういうもの。画はどうだ。香料はこんなものを香使っている。
などなど、実に微に入り細に入って書かれている。読んでいて目に浮かぶようだ。
長い本の、各章全てが対区の章立て文で飾られているし、登場人物それぞれの作という
形で見事な詩がふんだんに出てくるのも素晴らしい。
この巻の白眉は、何と言っても「大観園」の建設だろう。
宮中に側室として上がっている宝玉の姉の、「やど下がり」の行事に合わせて、
建設される大庭園だ。その庭の景観、建物、調度の素晴らしさは、一度は見てみたいものだ
と思わせる豪華絢爛さだ。
上巻は一気に読んでしまった。中巻が楽しみでならない。
中国好きがこういうところまで来てしまった。
毎週火曜は、最近夢中で読んだ本の話です。