最近読んだ本、「青べか物語」、「山海記」。

  • 2019年10月21日

山本周五郎、「青べか物語」。

あまりにも有名な著者の有名な本、読んでなくて恥ずかしいかったけど、前に
沢木耕太郎の「作家との遭遇」を読んだ時にこの本が出てきて、読みたいなって
思ったやつだ。今回、入院するに当たってその間は死ぬほど暇やろなあって思い
買いに行った。
私はここに来て、蒸気河岸の先生と呼ばれている。
「青べか」を買った話。
芳爺さんに初めて会ったのは「東」の海水小屋であった。
新入りとして目をつけられた?
二度めには百万坪で会った。
「おめえ舟買わねえか」
ボロ舟をおしつけようとしてる?
三度めは根戸川亭で会った。
根岸川亭は洋食屋、トンカツを食いながらビールをすすっていると、
上手にビールをたかられた。
結局、ぶっくれ舟、「青べか」を買ってしまった。
うまいこと騙されたような、釈然としない気分で持ち主になった。
読み始めて一気に惹き付けられた。風景描写がとても素晴らしい。
そこに暮らす人々の個性が実に様々に絡み合ってとても素晴らしい。
うらぶれた港町、渡し船の客と細々とした漁業などで暮らしを立てる
人たち。昔は栄えたかも知れんけど、時とともに落ちぶれていく。
どこまでも優しい人たち、意地悪な人たち、抜け目ない人たち、情けない人たち、
良い人、悪い人、その人達が息づく暮らしにどんどんと惹き込まれていく。
とても良い。
どこにでもありそうな風景。
それをこんな風に文学に仕立て上げる筆の力、すごいなあ。

佐伯一麦、「山海記」

これも入院に備えて図書館で借りてあった。
本の帯に書いてあった言葉。
「道を行き、地誌を見つめる。 海は割れ、山は裂けてその相貌を変える。
はざまに堆積していく人びとの営みの記憶、それを歴史というのではないか・・・・。
東北の震災後、水辺の災害の痕跡を辿る旅を続ける彼は、
締めくくりに3・11と同じ年に土砂災害に襲われた紀伊半島に向かう」

奈良の近鉄八木駅から和歌山県の南端にある新宮まで紀伊半島を縦断する日本一長い路線バス
がある。この路線に乗って旅をするロードノベルのようなロードエッセイのような物語。
すれ違いもままならない狭くて曲がりくねった山道を指差喚呼しながら走るバス。
とても良い。
一回通しで乗ってみたい。
部分的には熊野古道なんかに行った時に時々乗ったことがある。山中で疲れ切った時に
バスが時間通りにやってくると救いの神が来たようでとても嬉しい。全部乗ったら
約8時間? これも疲れるやろなあ?
路線の途中特に五条から十津川あたりは歴史の宝庫だ。
武智武智麻呂の栄山寺の八角堂、賀名生の南朝の史跡、貴人が逃げ暮らした所、
平家の落人、天誅組の最後。
山の上は修験道の道、役行者の道。
等など、枚挙に暇がない。
こういう話に東北の震災がからむ。同じ年の紀伊半島の大水害がからむ。
人の暮らし、山の暮らしを静謐に描く。
とても面白い。

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ありがとうございました。