九度山暮らしのある日、映画「バルバラ」を見た。

バルバラの映画を見られてよかった。

学生時代はお金がなかったけどレコードが聴きたかったんで、レコードプレーヤー単体を
買ってきて、それをトランジスタラジをに直結して聞いていた。ようわからんけど
工夫して適用にやったら動いてしまうような時代やった。
もちろん音はお粗末なもんやったけど、ちびちびと買ってきたレコードをそれで
聞くのがとても嬉しかった。
ジャズが好きでちょうどその頃脂が乗っていたマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン
なんかのレコードを買って楽しんでいた。クラシックも少々、ジャズとクラシック以外で
初めて買ったのがバルバラの「不倫」だった。聞いた途端に惹き込まれて病みつきになった。
未だに愛聴盤の上位にある。

barbara

素晴らしく透き通った高い声。凛として気品がある。
そしてその歌はドラマチックで哀しげで力強いのに儚げでもある。パリのエスプリ、とても格好いい。
劇場で聞く「不倫」はとても良かった。
不倫と言いながら奔放な性の物語ではなくて、我が子へのあふれる愛をこういうかたちで
表現しているのだ。
いやもしかしたらもっと深い意味が? 知らんけけど。
「黒いワシ」、「ナントに雨が降る」、とても良い。
劇場で聴く機会がなかったのは残念やけど映画の中でこうして蘇る。
これはバルバラそのものではなくて、バルバラの映画を撮るためにバルバラになりきろうと
する女優とバルバラを愛してやまない、偏執的なほどの監督の物語。
そのなりきりを通して本物のバルバラが歌の中に立ち上がる。
ええなあって思いつつ、浸ってしまった。
それにしても、もう50年ほども前に買ったレコードの歌い手の話。
20年も前に死んだ人の話。
そんなん誰も知らへんやろなあ。誰も興味ないやろなあ。
いまさらながら気がついた。
1人で浸ってもみっともないだけやんか。
でもまた時々聞くとしよう。幸い今は真空管のアンプでこだわりのスピーカーとレコードプレーヤーを
使って楽しむことができる。これももう何十年か使ってるやつだ。
じいさんはいつまでも古いもんから離れられへん。

barbara

映画が始まる前に。

横の方に座ったおばちゃんたちが、バリバリとモノを食いながらしゃべってはる。袋から
お菓子を出す音も凄まじい。大丈夫かいな始まったらやめてくれるんやろか?
とても心配だ。始まる寸前、ちょっと前、さあ映画に入り込むぞという気持ちの盛り上がりが
できへん。どうしょうと思ってたらやめてくれた。
静かになった。
ありがたい。

「テアトル梅田」

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ありがとうございました。